
アーチストは「ラビヨンダ(La Bionda)」というイタリア人の兄弟2組。録音などの活動拠点はドイツで、いわゆる「ミュンヘンディスコ」の枠内にある人々です。「ワン・フォー・ミー…」の発売は78年。私はまだ中学1年生でしたから、リアルタイムでは踊った記憶はないのですが、典型的なハッピー・ディスコの名曲だと思っています。その能天気なラテンぶりはYouTubeの映像でも伝わってきます。
ラビヨンダ兄弟には、このほかにDesert Of Mars(78年)、Bandido(同)、I Wanna Be Your Lover(80年)などの代表曲がありますけど、いずれも欧州でのヒットで、米国ではあまり相手にされませんでした。
それでも、曲はいずれもディスコというジャンルを越えるほどに完成度が高く、しかもラテンからロック、ファンクまで、曲調もバラエティーに富んでいました。「I Wanna be…」などは、前回紹介の「スペース」にも似た典型的な“宇宙ディスコ”であります(YouTube動画も珍妙です)。
さて、実はこの兄弟、ほかにもっと偉大な業績を残しております。それは、かの「D.D.サウンド」の産みの親だということ。日本人のディスコ好きなら誰でも知っている(?)、超特大定番キラーチューンの「1-2-3-4ギミ・サム・モア」と「カフェ」のアーチストであります。
まずは、上記リンクのYouTube動画をご覧ください(ただし「カフェ」はやや空しい静止画…)。…いやあ、「ディスコぶぁんざぁ〜い!!!」と叫びたくなるような陽気さでありますな。「1-2-3-4」は、前面に出てくるハーモニカの音色が泣けます。カフェの方は、発売は70年代だというのに、私が現役でディスコに行っていた90年前後まで、ばりばりにかかっていましたからねえ。時代を越えた“フロア大洪水チューン”です。
ラビヨンダ兄弟は77年、このD.D.(ディスコ・デリバリーの略)をスタジオミュージシャンたちと編成し、自分たち名義のレコードと並行して売り出しました。動画でも登場しておりますが、自ら(たぶん弟の方)ボーカルも務めています。「カフェ」が全米ディスコチャートでランクイン(79年に41位)するなどして、懸案だった米国進出も果たしました。やはり80年代に入ると活動は停滞してしまうわけですが、ピーク時にこれだけ頑張れば、まあ十分でしょう。
ラビヨンダ、D.D.ともに、どのアルバムも出来がよろしく、よくある単調なディスコとは、確実に一線を画しています。ただ、12インチやLPはずっと高値安定で、再発CDも良いものがほとんどありません。写真上のCDは、1992年に発売されたD.D.の日本盤ベスト(テイチクレコード)で、カフェの16分フルバージョンが入っているなど内容は素敵なのですが、中古CD店ではまったくと言って良いほど見つかりません。困ったものです。
「ラビヨンダ」名義では、ロシア盤の変なCD(写真下)などがあります。CDという意味では、これぐらいで我慢するしかないのが現状であります。
