Rick Astley仏の面も三度……というわけで、「80年代後半・怒涛のユーロビートシリーズ」の最後を飾るのはリック・アストリー。ソウルフルな声の持ち主でありながら、見た目は単なる「英国のお坊ちゃまシンガー」であります。

もういきなり「日本盤」であることがバレバレな左写真は、むか〜しから売っているにも関わらず(89年発売)、今もTSUTAYAなどのバーゲンセールで500円程度で普通に見かける不思議ちゃんCD「12インチコレクション(5曲入り)」であります。つまり、それだけ当時は人気だったため、大量にプレスされた証だというわけですね。プレミアはまったくありません。

ただし、中身については、「必要十分の名盤」と私などは言い切ってしまいます。まず、リックさんを聴くのであれば、12インチである方が良い。そして、そんなにたくさん名曲がないから5曲入りで十分――ということです。

収録曲は、「ネバー・ゴナ・ギブ・ユー・アップ」「トゥゲザー・フォーエバー」「テイク・ミー・トゥー・ユア・ハート」「ダンス・ウィズ・ミー」「ストロング・ストロング・マン」。最初の2曲(両方とも全米ポップチャート、ディスコチャート、英国チャートいずれも1位)だけでもありがたいのに、3曲もプラスされているのです。

あえていえば、「When You Need Somebody」あたりが入っていればパーフェクトだったのでしょうが、まあ我慢の範囲であります。

プロデュースは、またもやストック・エイトケン・ウォーターマン(SAW)でありまして、曲調が「いかにも」というのは周知の事実。5曲とはいえ、続けて聴くと飽きます(断定)。でも、声はやっぱりいいのかなあ、と思います。全盛期バブルディスコの「フロア炸裂」の思い出もよみがえりますしね。女性ボーカル優勢のユーロビート(後期ハイエナジー)界にあって、ここまで男性ボーカルで高い位置を占めることができたのは特筆すべきことです。

リックさんは、90年代以降はSAWから離れ、自らの原点であるソウルな路線(もともとクラブのソウルバンドシンガーだった)で自立の道を模索しますが、あまりうまくいきませんでした。盛者必衰の理であります。それでも、2曲も超特大ヒットを飛ばしたのだからよしとしましょう。少なくとも“一発屋”ではないわけです。