
70年代後半のディスコシーンでは、YMOに限らず、いろんなテクノ系アーチストが出始めていました。米国からはDevo、ドイツからはクラフトワーク、ベルギーからはTelexといった具合です。「テクノディスコ」という点では、かつてここで語らせていただいた「ミュンヘン・ディスコ」の御大ジョルジオ・モロダーも忘れてはなりません。
YMOは、テクノ音楽そのものの創始者ともいえるクラフトワークはもとより、ジョルジオさんから多大な影響を受けているといわれます。その上で、コンピューターゲームの音をふんだんに使うなどして、独自性を打ち出しています。
…がしかし、この人たちは、ディスコ的に決定的な“誤り”があるのです。このデビュー盤をあらためて聴くと、ちょっと凝りすぎ、という感じ。まさにインテリで前衛的であります。つまり、「おバカ」の対極にあるような音楽。これでは、とてもゴキゲンに踊ることなどできない(はずです)。
あえて「おバカ」な点を挙げれば、相当な技術力と想像力を駆使しているのではありますが、やはり中心楽器となるコンピューター(シンセ)の音が「チープ」だということです(皮肉&トホホ)。いや、確かに「遊び心」は感じるのですけど、至極「インテリな実験」なのでありました。
デビュー盤は、日本版とUS盤の2種類を出しています(内容的にはそんなに変わりはない)。そのことからも分かるように、米国の当時のディスコ市場を大いに意識しています。けれども、そこそこの話題を呼んだとはいえ、ディスコチャートは最高42位と「まずまず」でした。
それでも、彼らの最高傑作とされる2枚目(79年)「ソリッド・ステイト・サバイバー」は無難な電子音ディスコです。音の厚みが格段に増している上、ドラムビートもしっかりかっきり、刻まれています。これだと少し踊りやすいですね。私なども、日本でおなじみの「ライディーン」あたりは、よくフロアで耳にしたものです。
まあ、「テクノ音楽史における先駆者としての功績」はともかく、この人たちの音楽をディスコでくくって考えると「どうもいまひとつ」ということになります。「解放音楽」ディスコと、「(誰でも一応同じ音が出せるという意味での)解放楽器」シンセとの融合は、やはり電子テクノロジーが急速に進歩する80年代を待たねばなりませぬ。
……ところが、そのころには、YMOにはポップス感はなくなり、もっと前衛的になっていってしまうのです。世界ディスコ史に残る日本発の曲ができたかもしれないのに。わたくし的には、そこが残念でありました。