Cherまずは左の写真を見ていただきたい。「おーっ せくすぃ!!」と思った方はまずは正解。79年発売のシェールのアルバム「Take Me Home」はもろジャケットで売ろうとして、ホントに売れました。シングルカットされたアルバム同名曲は、全米一般チャート8位まで上昇。60年代からヒットチャートの常連だった彼女は、5年ぶりにベスト10に返り咲いたのであります。ディスコチャートでも2位まで上昇しました。

彼女は当時33歳……にしてはプロポーションが保たれているとは思うのですが、それはともかく、このジャケットはディスコ、しかも発売元カサブランカ・レーベルならではのド派手さです。コンセプトは「バイキングのクイーン」だそうです(涙)。バイキングの本場の北欧だったら、冬場にこの格好だと風邪ひきます。

でもまあ、(性の)解放音楽でもあるディスコは、「エロエロ大合戦」の戦場でもありますから、この程度ではまだたいしたことナシ。“エロジャケ”ということでいえば、Love & Kisses、Passion、Cerrone、Kelly Marrie、Spaceなどなど、枚挙にいとまがありません。今回はうち1枚だけ、わりとポエジーで、18歳未満でもOKなやつを紹介しておきます(下写真。ぜんぜんOKじゃないが)。

シェールは1946年、米カリフォルニア州生まれで、ネイティブアメリカン(チェロキー族)の血を引いており、母親が芸能界に身を置く人物でした。生まれてすぐに両親が離婚し、母親と2人で貧乏暮らしになったり、里子に出されたり、失語症になったりと、若いころはけっこう多難な時代をすごしました。

そんな折の16歳のとき、地元ロサンゼルスの喫茶店で、後に夫となるソニー・ボノと知り合いました。ボノは米ポップス界の名プロデューサー、フィル・スペクターとともに仕事をしていたミュージシャンだったこともあり、シェールはボノと組み、男女デュオ「ソニー&シェール」として歌手活動を開始。65年に出したシングル「I Got You Babe」が全米1位獲得の大ヒットとなり、大スターへの道を歩み始めました。

その後の人生はほぼ順風満帆。途中でソニーとは別れ、ソロになりましたが、「Gypsys, Tramps Thieves」(71年)、「Half Breed」(73年)といった全米1位の大ヒット曲をコンスタントに出していきます。その息はものすご〜く長く、98年に発売したダンス系のアルバム「ビリーヴ」は、全世界で2000万枚を売上げるという化け物ぶりを発揮しました。同名シングルも、全米一般チャートで4週連続1位、ディスコチャートでも5週連続1位となり、既に名曲を数多く歌ってきた彼女にとっても、最大のヒットとなっています。

しかし、これだけではありません。映画やテレビドラマでも大活躍し、87年には映画「月の輝く夜に(Moonstruck)」でアカデミー賞主演女優賞を獲得。歌手だけでなく、女優としても特大の成功を収めている稀有な人なので〜す。

さて、そんなシェールさんではありますが、70年代半ば、歌手としてはちょっとスランプの時期がありました。それまでのように、リリースする曲がベスト10に入らなくなったのです。従来のポップス路線からの転換をはかり、カサブランカレーべルから出したのが「Take Me Home」だったというわけです。「ひと肌脱いで、見事カムバック」といった感じだったのですね。曲の内容は「う〜〜ん、ディスコでしかないなあ」との一般の評価でしたけれども、気合勝ちだったのではないでしょうか。

カサブランカからは、「Take Me Home」と「Prisoner」(79年)の2枚のソロアルバムを出しています。どちらも「もろディスコ」!。彼女特有の少しもっさりした歌声も、ドンドコリズムに乗って全開であります。いかんせんディスコブームが終わる時期だったため、大ヒット曲は結局Take Me Homeだけでしたが、それでも、80年代にはポップ・ロック色を再び強め、スターの座を維持したのですからさすがです。

大物だけに、Take Me Home、PrisonerともにCD化もされております(オリジナルジャケで)。Believeについては、比較的最近のリリースで、しかも大量に発売されたため、中古価格は大暴落! アメリカのアマゾンでは日本円で「1円20銭」というのもありました。日本国内でも300円くらいで叩き売りです。まるでCDのワゴンセールで必ず見かける「シャンプー」「スノー」「スキャットマン・ジョン」のような扱いなのは、トホホですな。

Love & Kisses