Roller Discoローラースケートを履いて踊る「ローラー・ディスコ」は1980年前後、米国を中心に大流行しました。“大人向け”のディスコに行けない少年たちが、主に通っていたようです。日本でも、東京や大阪などの大都市で多少そんな場所があったようですが、私のいた札幌にはなかったと思います。もちろん、アイススケートリンクならたくさんありましたけど(今はそれも廃れてしまった)、当然ながらディスコであるはずがありません。

ローラー・ディスコは、2年前に全米で公開され、最近、日本でもDVD化されたRoll Bounce(ロール・バウンス)という映画で再び光を浴びました。ストーリーは、ティーンエージャーの友情や家族愛をテーマにしたありふれた青春モノではありますが、ローラーダンスの場面がふんだんに出てきますし、80年前後のディスコヒットが雨あられに流れてきて爽快です。ダンサーたちは、重いスケートを履いているだけに、ちょっと踊りにくそうですけどね。

劇中、特に、ローラー・ディスコの代表曲であるVaughan Mason And Crew(ボーガン・メーソン・アンド・クルー、80年、全米ディスコチャート38位)の「バウンス、ロック、スケート、ロール」が前面にフィーチャーされております。妥当な線といえましょうか。曲調は、「コンピューター・ファンク」の分野を切り開いたZapp(ザップ)みたいな感じで、重量感にあふれています。

ただ、この映画のサントラはいけません。期待のオリジナル曲がほとんどなく、最近のミュージシャンによる“新解釈”ばかりです。「バウンス…」はオリジナルの5分程度のやつが入っていますが、12インチ(7分半)のフルバージョンが入っているわけでもなく、やはり退屈ですねえ。かのビヨンセによる、ローズ・ロイスのバラード名曲「Wish On A Star」のリメイクはまあまあでした。

さて、約30年前当時、米国ではローラーディスコの映画も盛んに作られました。代表的なのは79年公開のRoller Boogieで、本国ではDVD化もされています(写真下左)。主役はなんと、恐怖映画エクソシストの「首逆向き少女」のリンダ・ブレア。キワモノの極みのような素敵な作品ですが、日本では見られない「リージョン1」の規格。とても残念です。

もちろん、ローラー・ディスコの現場でも、実際は普通のディスコと同じような曲がかかっていたのですが、意識して作られた専門(?)の曲もあります。前述した「バウンス…」以外には、Peaches & Herb「Roller-Skatin' Mate」、Pepper 「Roller Skating (With You)」、Cher「Hell on wheels」(いずれも79年)、Vinzerrelli「Skate Dancer」(80年)などが含まれます。

写真上のCitiのLP「Roller Disco」(79年)も、そんな1枚。レーベルは、クール&ザ・ギャングを輩出したDe-Liteで、「流行りモノで小銭稼ぎ」の魂胆がミエミエですけど、実際は売れませんでした。CD化もまず無理です。でも、中身はすぐれてファンキー快活路線でして、気に入ってます。特にA面2曲目「Heart Attack」は、シンセの低音がジョルジオ・モロダーみたいでなかなか格好がよろしい。CD好きの私もときどき、面倒くさいけどターンテーブルのカバーを外して、針を落として聴いています。

Vaughan Mason And CrewやCitiのような例をのぞき、「ローラー・ディスコ・アーチスト」のような人はほとんどいません。しかも超マイナーだったり、一発屋だったりします。比較的売れたVaughan…もアルバムでのCD再発はナシ。「バウンス…」のロングバージョンについては、英Soul Brother Recordsのディスココンピ「Groove On Down Vol.1」(写真下右)に収録されています。

Roller BoogieGroove On Down