Carl Douglasキワ物ディスコとしてすっかり定評のあるカール・ダグラスの「カンフー・ファイティング」(74年、全米・全英チャートそれぞれ1位)。世界を席巻したブルース・リーのカンフーブームに乗って特大ヒットになった一品でして、同時にディスコブームの先駆的作品にもなりました。

ジャマイカ出身でその後欧州に移住。Biddu Appaiahというインド系英国人のディスコプロデューサーに出会い、デビュー曲のカンフー・ファイティングをヒットさせました。実は、この曲はB面用にジョークとして即席で作られ、しかもスタジオの使用時間の制限があったため、10分足らずで録音されたとの逸話が残っています。

レコード会社側が出来上がった曲を聴いて「カンフーブームだし、これはA面でイケるゾ」と思い、急遽A面に変更して発売したところ、予想以上のヒットになってしまったのでした。このレコード会社とは、前回紹介したリアル・シングの初期のヒット曲をリリースしていたの同じ「パイ(Pye)レコード」(英)です。

この曲では、おなじみの「フッ! ハッ!」の掛け声に加えて、随所でオリエンタルな雰囲気を醸し出す「レレレレド、ド、ラ、ラ、ド〜♪」のメロディーが小粋かつ間抜けに流れてきます。以前に紹介したアネカにも使われている「アジアン・リフ」というやつで、欧米人はこれを聞くと中国や日本を思い起こすのだそうです。

映画「サタデーナイト・フィーバー」にもそんな場面がありましたが、欧米人は当時、カンフー術を操るブルースリー、さらにはアジア人全体に妙な好奇心を抱いたようです(今もだな)。“奇天烈系ディスコ”にとっては、格好のテーマになったのだと思われます。実際、翌75年にも「バンザイ」という変な日本風の名前のフランスのグループが、「チャイニーズ・カンフー」というディスコ曲をヒット(米ディスコチャート7位)させています。

この人のCDは、写真のCastle Music America盤を含めてベスト盤(!)がいくつか出ています。通して聴いてみると、なんと意外にソウルフルな感じ。確かにジャケ写真はイタいのですけど、カールさんのボーカルは表現力がありますし、曲調も多少ジャマイカンな旋律が入っているなどして、中身はけっこう凝っています。

まあ一発屋ということで片付けられるアーチストではありますが、英国では多少、長持ちしまして、70年代後半に「Dance The Kung Fu」と「Run Back」という2曲が小ヒットしています。

内容は充実しているからなんとか見直してあげたいところ。でも、本人の歌う姿をみていると、やはりトホホな気分に逆戻りです。現在はドイツに移住して、CMなどの映像企画会社を経営して成功しているようですけどね。

ちなみに、90年代後半には、Bus Stopという英国のアーチストが「カンフー・ファイティング」をラップ&テクノ調にリミックスしていて、PVではカールさん本人も出演しています。