Mリップスに触発されました。この辺で華麗なる「一文字一発屋」のMを紹介しておきます。

Mは、ロビン・スコットという英国のニューウェーブ・ミュージシャンの偽名であります。ファーストアルバム「ニューヨーク・ロンドン・パリ・ミュンヘン」の筆頭に収録されている「ポップ・ミュージック」(79年)は、シンセ・ディスコの先駆け。妙に大ヒットして全米ポップチャート1位。さらに全米ディスコチャートでも4位まで上昇しました。

メロディーは至って単調。歌詞も単語や短いフレーズの羅列で、(あえて?)深い意味は持たせていません。「ポップ、ポップ、ポップミュージック」の無機質なリフは、リップスの「ファンキータウン」同様に耳にこびりつきます。印象操作の勝利といえましょうか。「ポップ=大衆」であり、しかもしっかりディスコ・ワールドだということもあって、意図的なマーケティングは許されるわけです。

しかし、私がこのアルバムでもっとも好きなのは「ユナイト・ユア・ネーション」であります。どういうわけか、NHKーFMの深夜放送「クロスオーバー・イレブン」で当時よく耳にしました。ディスコではとんと聞きませんでしたが。

いやあ、この曲こそ、Mさんの世界だと思っております。シンプルでテクノな曲調はもちろん、投げやりな女性ボーカルもよろしい。遊園地のメリーゴーランドの前で、風船を持ったピエロが、半べそをかきながら踊っているような印象だといえば、分かっていただけるでしょうか…って、分かるわけないですな。でも、何だかじんわりと明るい気持ちにさせてくれる。不思議な魅力があります。

まあ、一発屋ですから、その後の活躍ぶりは推して知るべし。80年代前半に坂本龍一のアルバムを手がけるなどしていますが、話題性もその程度であります。

それでも、へんてこディスコの味わいは、今でもかなりの高評価。しかも、意外に日本で人気。Mが出したアルバム4枚のCDが近く、どどんと国内盤で再発されるそうです。採算取れるのでしょうか。

写真のCDは既に発売されている米盤ベスト。これ一枚で十分だとは思います。