Melba Mooreメルバ・ムーアといえば、都会派ニューヨーク・ダンスチューン「Love's Comin' At Ya」(82年、米ディスコチャート最高2位)ですねえ。ディスコでも当時、盛り上がり時間帯前後に「ラ〜ブズ、カミナッチャ〜♪♪」と、耳に心地よいサビのメロディーが聞こえてきたものです。シンセ使いが洗練されているため、特に重低音を利かせて聴くと最高であります。

メルバさんは1945年、NY生まれ。1968年に大ヒットしたブロードウェイミューカル「ヘア」のメーンキャストの一人に選ばれ、注目を浴びるように。その役は、ハリウッド女優ダイアン・キートンで既に決まっていたのですが、ヌードシーンがあることを知った彼女が「イヤ!!」と拒否。「私、脱いでもいいわよ!」とプロ根性を見せた次点のメルバさんに急遽、決まったという経緯があるそうです。当時、黒人としては異例の抜擢だったのですが、このミュージカルのヌードシーンは相当、物議を醸したのでした。

さて、一流ミュージカル女優の仲間入りを果たしたわけですから、彼女の歌唱力も折り紙つき。70年代に入ると歌手としても活動を本格化させました。少し前に紹介した故ヴァン・マッコイさんの愛弟子となり、76年、ブッダ・レーベルからアルバム「This Is It」を同氏プロデュースにより発表し、これがスマッシュヒット。同名シングル曲がディスコチャート10位にまで上昇しました。

その後もコンスタントにソウル/ディスコ系のヒットを飛ばし続けました。78年には軽快ディスコの名曲「You Step Into My Life」をリリース。80年代に入って、彼女の最大級のヒット曲である「ラブズカミナッチャ〜♪」に繋がっていくというわけです。さらに、86年には「A Little Bit More」「Falling」の2曲が、ディスコチャート1位に輝いています。90年代にも同チャートでベスト10入りする曲を出していますから、なかなか息の長い歌手といえましょう。

彼女のCDはけっこう再発されています。写真は10年ほど前に発売された米国盤ベスト「This Is It: The Best of Melba Moore」。主な曲が網羅されていて、入門盤としては最良ではないでしょうか。