Madleen Kane奇妙でけだる〜いディスコディーバといえば、マドリ〜ン・ケ〜ンさん。日本では「Forbidden Love(邦題:禁じられた愛)」(1979年)で知られます。

まず、眉毛がありません。70年代のデビッド・ボウイみたいな金髪美女です。このスタイルが当時の流行だったのでしょう。何しろ、世界的モデル事務所「フォード」所属の超売れっ子モデルだったのです。ハリウッドからも、かのジャック・ニコルソンの共演女優としてお呼びがかかったくらいなのですから(でも彼女は「私、ハリウッドになんて住みたくな〜い」と断ったらしい)。

彼女は1958年、スウェーデン生まれ。欧州を中心にモデルで活躍中のころに歌の世界に入り、1978年には早くもアルバム「ラフ・ダイヤモンド」の「ラフ・ダイヤモンド/タッチ・マイ・ハート」を全米ディスコチャート3位に送り込みました。その後も、アルバム「Cheri」の「禁じられた愛/ユー・アンド・アイ」(79年、同3位)がヒットしています。

80年代に入ってからも勢いは衰えず、81年には大御所ジョルジオ・モロダーのプロデュースによる「ユー・キャン/ファイア・イン・マイ・ハート」が、同チャートで3週連続1位になっております。

この人、けだる〜いのは容姿だけではありません。曲も全体的にアンニュイであります。「モア・モア・モア」(76年)で有名なアンドレア・トゥルーのように、当時よくみられた「お色気ボイス系」の女性ディスコ歌手だったのですね。ただし、アンドレアさんの「元ポルノ女優」という経歴と比べると、もう少し華やかな感じです。

さて、代表曲「禁じられた愛」ですが、今聴いてもとてもイイ曲だと思っています。イントロのピアノと「ア〜ア〜ア〜」という女性コーラスが、テルマ・ヒューストンの名曲「ドント・リーブ・ミー・ディス・ウェイ」(76年)のイントロにも似たドラマチックな雰囲気。メロディーもゴージャスそのもので、サビにかけて徐々に盛り上がっていく感じが実に心地よいのですねえ(ベタボメ)。

それでも、80年代半ばには人気が急激に衰えました。ハイエナジーの名プロデューサーであるイアン・アンソニー・スティーブンスと組んで、米TSRレーベルからアルバム「カバー・ガール」(85年)を出したものの、セールスは今ひとつ。既に過去の人となっていたようです。

私自身はディスコではほとんど耳にしませんでしたが、なんだか印象に残るマドリ〜ンさん。ディスコ史にも一応、しっかりと足跡を残したとはいえましょう。

この人のCDはあまり出ておらず、写真のTSR盤のベスト「12 inches & More」程度。しかも、「12インチ集」と謳っておきながら、肝心の「禁じられた愛」は短いLPバージョン。もっと再発してほしいアーチストの一人ですね。