Depeche Modeヒューマン・リーグの後はといえば、1980年代の新興勢力エレポップ界では最大のライバルだった(というわけでもないが)、デペッシュ・モードを紹介しないわけにはいかないでしょう。

私にとってはこのファーストアルバム「Speak & Spell」(81年)=写真=に尽きますね。バンドメンバーの中心人物ビンセント・クラークの魅力炸裂!であります。音の特徴は、一言でいえば「牧歌的シンセ」。シングルカットされた「ジャスト・キャント・ゲット・イナフ」の優しげなメロディーは、今も胸に響きますね。最近、日産車マーチのCMでも、女性ボーカリスト(ニナ・マドゥーという人)によるリメイク曲が使用されていました。

ほかには、ちょっとアップテンポでカル〜イ感じの「ニュー・ライフ」なんかもヨイ。これについては、高校生のとき、学校の帰りに寄ったレンタルレコード屋でシングル盤を借りた覚えがあります(それでも購入までは至らず)。

「ゲット・イナフ」と「ニューライフ」は、本国英国はもちろん、米国のディスコでも人気が出ました。ビルボードのディスコチャートで30位以内にまで上昇しています。

ただし、フロアで聞くには、正直チョットつらかった。音が薄すぎて、踊りにくいしノリもイマイチなのです。札幌のディスコではあまりかかっていなかったようです。「テクノカットにコムデギャルソン」の人々が集まった東京新宿・ツバキハウスのような、ニューウェーブ系ディスコでは人気だったのではないでしょうか。

私がディスコで聞いたのは、彼らの後のアルバム「Construction Time Again」の「Everything Counts」(83年)とか、「Some Great Reward」(84年)の「People Are People」あたりです。

この辺になると、ミックスやアレンジに厚みが出てきて、ビートも「ドンドコドンドコ」としっかりしてくる。LPジャケットは、工場労働者風のデザインを使うなど、やや硬派でオサレな雰囲気。音もインダストリアルで複雑な感じになります。「シンセサイザー楽器の進化とともに歩むデペッシュ・モード」なのでありました。

ビンス・クラークは、周知の通り、途中で脱退して、前に紹介したヤズーを結成したり、それもやめてイレイジャーを結成したりしました。どちらも商業的には大成功。音もますますディスコ/ダンス寄りになりました。でも、メロディーの美しさは相変わらずで、まさに哀愁エレポップの王道をゆくような人であり続けたと思います。