
ソウルのボーカルグループも総じて「80越え」できていません。特に男性グループの凋落は顕著でした。70年代にあれだけ隆盛を極めたというのに、少し前に紹介したウィスパーズなど一部を除けば、ヒットチャートからは姿を消していったのです。ディスコのせいだけではなく、ポピュラー音楽シーン全体が、ボーカルグループ時代の終焉を言い渡していたというべきでしょうか。
…ということで、今回はスピナーズ。言うまでもなく、「イッツ・ア・シェイム」(70年)や「フィラデルフィアより愛をこめて」(72年)で知られる大物ですけど、やはりディスコの嵐に振り回された感があり、「80越え」がイマイチできなかった人々だと見るべきでしょう。でも、私にとっては、79年後半にリリースしたアルバム「Dancin' And Lovin'」は名盤です。「腕っこきのボーカルグループが、ディスコを上手にこなすとこうなる」という好例だと思うのです。
収録曲は「Disco Ride」に始まって、「Body Language」、「Let's Boogie, Let's Dance」、2曲メドレー構成の「Working My Way Back To You/Forgive Me Girl」など。ベタなディスコタイトルがどうしても目立ちますが、いずれもハッピーでゴキゲンな(!)ダンスナンバーです。
プロデューサーは、「レッツ・オール・チャント(邦題:チャンタで行こう)」(78年)でおなじみのマイケル・ゼーガーさん。時代から考えて、さもありなん、といったところですけど、もろ「ディスコオンリー」という感じはありません。私の好きな初期シンセ音はほとんど使われていないものの、その分、フィリーサウンド風の上品で洗練されたオーケストラ演奏が楽しめます。
中でも、ビルボード一般チャート2位まで上昇した「Working…」は超名曲ですね。フランキー・ヴァリ&フォーシーズンズの66年のヒット曲「Working My Way Back To You」を、ほかの曲と合成してメドレーとしてディスコリメイクしたものですが、私は中学生のころからずっと今まで、飽きずに聴き続けています。何だか体だけではなく、心までが踊りだすようなイイ雰囲気。高音、低音パートのボーカルの掛け合いが絶妙であります。82年ごろの札幌のディスコでも、何度か耳にしました。
あとは、「Body Language」も好きな曲ですなあ。途中で、なんと「レッツ・オール・チャント」の「ユア、ボディ、マイ、バディ、エブリバディ、ワーク、ユア、ボディ♪」という「さあ、みんな踊ろうよ!!」のリフが入ってくるんです。そんな遊び心がたまりません(ベタボメ)。
彼らは、このアルバム発表の直後の80年にも、ディスコメドレー曲「Cupid/I've Loved You For A Long Time」をシングルヒット(ビルボード一般チャート4位)させました。まさに「Disco Ride」してブームに乗っかった形でしたが、3匹目のドジョウはいませんでした。調子に乗ってまたもやメドレー「Yesterday Once More/Nothing Remains the Same」(81年)を出してしまい、ビルボード最高52位と敗退。ここで彼らも「過去の人びと」になってしまいましたとさ。
上写真のCDは、米Rhino盤の「Dancin' And Lovin'」。LPジャケットがいかにもディスコ風で素晴らしかっただけに(下右写真)、もっと大きく印刷してほしかったところですね。
