Evelyn King「シェイム」(77年)のイブリン・キング(後にイブリン・シャンペーン・キングと改名)は、1960年生まれ。15歳のとき、フィリー・サウンドで名高いギャンブル・アンド・ハフのシグマ・サウンド・スタジオでスカウトされ、デビューしました。だから、最初のころのアルバムの写真はすごく若くて、小学生みたいにも見えます。

スカウトの経緯は有名ですね。彼女は米フィラデルフィアにあるシグマスタジオをバイトで掃除中に、プロデューサーに見出されたのでした。いつもは母と姉が2人で掃除の仕事をしていたのですが、たまたま姉が病気で休んで代役となり、スタジオで母に「何か歌ってごらんなさい」と言われて、サム・クックの曲を歌っていたところ、T・ライフという著名プロデューサーに「こりゃあイケる!」と注目されたというわけです。つまりシンデレラガールです。

最初のシングル「ダンシン・ダンシン・ダンシン」は売れませんでしたが、次に出した「シェイム」がR&Bチャート7位、ディスコチャート8位に入る大ヒットとなりました。80年代に入っても、「アイム・イン・ラブ」(81年、R&B/ディスコ・チャート1位、)「ラブ・カム・ダウン」(82年、R&B/ディスコ・チャート1位、ポップチャート17位、YouTube動画)などと、ヒットを連発します。見事に79-80年の「ディスコ危機」を乗り越えたのでした。

彼女って、日本でもとても人気があります。私自身、彼女の曲は80年代初頭からよくディスコのフロアで聞いたわけですが、70年代ヒットのシェイムについては、あの祭り踊り風の画一的「ステップダンス」一色に染まることがあって正直、苦手です。ほかの「勝手に踊りたい組」と、どうしても分離してしまいますものね。やはり、アイム・イン・ラブとか、ラブ・カム・ダウンとか、みんなでアナーキーに踊れる80年代の落ち着いた感じの方が好みであります。

あと、彼女には「ベッチャ・シー・ドント・ラブ・ユー」(82年)、「アクション」(83年)、「アウト・オブ・コントロール」(85年)、「ユア・パーソナル・タッチ」(85年)なんていうヒット曲があります。洗練されたシンセ音と、相変わらず安定していて迫力のあるボーカルがうまく調和しています。もちろん、ステップ曲ではもはやありません。いずれも彼女の黄金期を代表する曲だと思っています。

CDのベスト盤はいくつも出ていますが、写真の米BMG盤が12インチバージョンが入っているなどして一番、出来が良いかと思います。ちなみに、私が最も好きなアルバムは「アウト・オブ・コントロール」が入った「ソー・ロマンティック」なんですが、こちらはCD化されておらず、残念です。このアルバムに収録の「アイム・ソー・ロマンチック」はアップテンポの明るい曲調で、ディスコ的には名曲です。