The Blackbyrdsファンクは掘り下げれば60年代、いや50年代後半のジェームズ・ブラウンにまでさかのぼりますが、70年代中盤に入るとディスコと見事に融合して、さまざまなファンク/ディスコ系アーチストが表舞台に出てきました。今回紹介するブラックバーズもそんな一例といえます。

ブラックバーズは1973年、著名ジャズ・トランペッターのドナルド・バードが中心となって結成しました。ドナルドは当時、ワシントンDCのハワード大学で音楽の教授をしていたのですが、そこで学生たち数人を集めてバンドを作ったのです。

ファンク系とはいいつつも、ジャズミュージシャンを親分とするだけに、ジャズやポップの雰囲気を持ったややソフトな音を特徴としています。ビルボードチャート的にも、「Gut Travel」(74年、ディスコ部門最高9位)を皮切りにヒットを次々と飛ばしました。「ウォーキング・イン・リズム」(75年、R&Bチャート最高4位)「ハッピー・ミュージック」(76年、同3位)あたりが代表曲ですね。

この人たちの曲については、踊り方もいたって滑らかに、軽やかに、といった調子でしょうか。

日本でも人気が高いウォーキング・イン・リズムについては、少し思うことがあります。この曲って、盛んに「ステップ」(特に「チャチャ」といわれる踊り方らしい)で踊られていたんですね。最近のダンクラ系ディスコ(イベント)でも、この曲がかかるとフロアが途端に「ステップ化」することがあります。私の場合、この「ウォーキング」を聴くと、ステップを連想してしまうのです。

私自身は、ステップがほぼ消滅して踊りがフリー化した80年以降、ディスコに行くようになったので、ステップはまったく分かりませんし、正直あまり興味もありません。でも、70年代、日本の大部分のディスコでは、あらゆるヒット曲について、何十種類もあるステップ形式のどれかを当てはめて踊っていたんですね。

例えば、映画「サタデーナイト・フィーバー」では少しだけ、外国人たちが皆で同じ踊りをするラインダンスのようなシーンが出てきますけれども、ステップは日本特有の「画一的な」ダンススタイルだと思っています。私の知人の外国人DJたちに尋ねても、「当時のディスコでは、日本のステップのような踊り方はしなかった」といいます。

まあ、ディスコって「たまには踊って神様(仏様)と交流しましょう」という「盆踊り」のような祭礼の意味も帯びていますから、不自然なことではないのかもしれません。それでも、フロアが同じ踊り一色に染まる光景はある意味異様です。どうも違和感を覚えます。

お客がそれぞれに楽しめれば一番よいのでしょうが、そもそも、フリーダンスとステップって、フロアでなかなか調和しない。そこが難しいところです。

わがままなほどに自由を求めて、反政府運動に奔走した大正期のアナキスト大杉栄は、「それぞれが勝手に自由に踊りながら、自然に調和するような世の中にしたい」という趣旨のことを述べていますが、「ディスコもそうあればいいのになあ」と思うことがあります。

その意味では、最近のクラブの若者は、いろんな「技」はあるんでしょうけど、もっと自由に勝手に踊っているようで、好感がもてます。

「わびさびの精神を極める」茶道や生け花ではないですけれど、何かと「形式」「型」「作法」にこだわる日本人。ぶっちゃけ若者文化の典型のようなディスコにも、そんな“文化”が染み込んでいたとは、なかなか興味深いものがあります。

写真のCDは、そんなステップからも解放された80年代発表の彼らのアルバム「Better Days」(80年)全曲が入ったUK盤。CDは80分近く収録可能なため、77年発表のアルバム「Action」とのカップリングになっています。

「Better Days」は、それまでの作品に比べても、もの凄く垢抜けしてポップな仕上がりになっていてとても気に入っています。当時、私のいた札幌のディスコではあまりかかっていませんでしたが…。でも、「Do You Wanna Dance?」なんて、喫茶店とかの有線では耳にこびりつくほど聞きました。BPMが140ぐらいある弾けた感じの曲で、ウキウキですね。こんな曲がフロアでかかったら、ぜひとも、好き勝手に楽しく踊りたいものです。