
中心人物はいうまでもなくリードボーカル兼ドラムのモーリス・ホワイト。ゴスペル出身の彼らしい伸びやかな低音の声は、少し聴いただけでもすぐ分かるほど個性的であります。もう一人、ボーカルの要になっているのはフィリップ・ベイリーで、こちらは美しい高音が売り物です。
ビルボードチャートをみてみると、最初のヒットシングルは71年の「Love Is Life」(R&Bチャート最高43位)で、以下、「I Think About Lovin' You」(72年、同44位)、「Evil」(73年、同25位)、「Mighty Mighty」(74年、同4位)などと続きます。ディスコ・チャートでは、75年の「Sun Goddes」(14位)、76年の「Sing A Song」(5位)あたりがルーツになります。
この人たちの曲は、ソウル、ファンク、ジャズはもちろんですが、自然崇拝的でアニミズム的な「アフリカン」の音が特徴です。「大地・風・火」というグループ名、ケニアあたりの先住民風の派手なステージ衣装、それにジャケットのデザイン(その多くを日本人イラストレーター長岡秀星が担当)からも思想が伝わってきます。
コンセプトはなかなか玄人好みがするのですが、いかんせんメジャーになり過ぎたため、ソウルファンからは今ひとつ評価が低いのも特徴ですな。例えば「初期のアースはシブくていいんだけどなあ」なんて声は、ソウルバーとかに行くと必ず耳にします。
ディスコブーム最盛期のヒットは「ゲッタウェイ」(76年)、特に日本でお馴染み「セプテンバー」(78年)、妹分のエモーションズがバックボーカルで参加している「ブギー・ワンダーランド」(79年)あたりが代表例。80年に入ってもかの「レッツ・グルーブ」(81年)というスーパー・クラシックヒットを飛ばしています。
私自身、子供のころから本当によく耳にした人たちです。中学生のときにはとりわけ「セプテンバー」が飽きるほどラジオでかかっていました。高校になってディスコに通うようになってからは、「レッツ」と「ブギー」は大定番。あまりにもフロアが人でいっぱいになるので、却ってうんざりして席に戻ってきてしまうくらいの人気だったのを思い出します。
個人的には、写真の83年発売のアルバム「エレクトリック・ユニヴァース」が印象深い。一番ディスコに通っていたころと重なっていて、特にシングルカットされた「マグネチック」など、気が狂うほどフロアでかかった時期がありました。この一つ前のアルバム「パワーライト」(82年)の「フォール・イン・ラブ・ウイズ・ミー」も死ぬほどかかっていました。
大御所アースも、ここ数年はさすがにナリを潜めています。でも、90年代まではコンスタントに中小ヒットを出していましたから、たいしたものです。
モーリスは90年ごろ、体の自由がきかなくなるパーキンソン病にかかり、グループにも一時、解散危機説が流れました。モーリスもフィリップも昔のように声が出なくなってしまい、衰えは否めない状況となりましたが、今もなお頑張っているようです。モーリスなんて41年生まれですからねえ。60歳を過ぎても現役でいられること自体、驚きでございます。