ABBAディスコといえばアバは避けて通れません。1974年から1982年までの実働期間に、世界で2億5000万枚のアルバム&シングルを売り上げたという偉人たちなのです。ビージーズでも1億8千万枚といいますから、そのすごさは認めざるを得ません。

スウェーデン出身というのが良いと思います。90年代に入ってロクセットとかカーデガンズとか出てきましたが、ポピュラー音楽的には非常に地味な国です。意外な国の四人組が、たどたどしい英語でヒットを連発した時代は、ディスコブームとちょうど重なっています。

インターネットを見ると、公式サイトやファンサイトを除けば、「商業ウケ狙い」「安っぽい(Cheesy!!!)」というディスコ特有の評価がされているようです。でも、私はかなり好きですね。よく聞くと、北欧の民謡やボヘミアのポルカやミュージカルといった要素を感じさせていて、なかなか個性的で凝っていると思います。アグネタ(金髪)とフリーダ(赤毛)のコーラスも美しい。

ディスコ的には、まずは「ダンシング・クイーン」(76年)。メロディーラインの美しさは、数あるアバの哀愁ユーロ系の中でも群を抜いていると思います。あまりにもベタ過ぎて、今のダンスクラシック・パーティーなどではかけにくい曲ではありますが。けれども当時は、テンポが非常に遅いにも関わらず、曲の出だしからフロアを華やかにする力を持っていました。

あと、好きなのは「レイ・オール・ユア・ラブ・オン・ミー」(80年)です。やっぱり美しい(ベタぼめ)。これには伝説の「ディスコネット・ミックス」という約8分のバージョンがあって、これは盛り上げ方が「奇跡」とまで言われるほどのリミックスとなっています。

周知のとおり、彼らはカップル2組の構成だったのですが、80年前後に2組とも離婚。ちょうどディスコブームの終焉とも重なって、またぞろ一気にスターダムから転げ落ちるのでした。

82年の解散後、4人ともソロで活動したものの、いずれも大ヒットは出していません。ビヨルン、ベニーの男2人が、1984年にヒットミュージカル「チェス」の主題歌「ワンナイト・イン・バンコック」(マレー・ヘッド)をプロデュースして、少し話題になった程度です。

詞の内容も、70年代は「今こそ踊るのよ!!あなたは輝くダンシンクイーン!!」といった調子であれだけ明るかったのに、80年以降には翳りを見せていきます。特に夫とのすれ違いに苦悩するアグネタとフリーダの本音がにじんでくるのです。

80年発売の上記「レイ・オール・ユア…」は、女の嫉妬と不安がテーマ。同じく80年の「ザ・ウィナー」は、一途な女の子の失恋がテーマです。そして81年発売の「ザ・ヴィジターズ」では、「誰かが来る!恐怖で壊れそう。何もかも奪われてしまう。助けて!!」と明らかにヤケになって狂い始めています。

まあ、活動期間がビートルズと一緒のたった8年間ですからね。その間にあれだけ売れたというのは、ビートルズとかプレスリー以外にはあまり見当たりません。ポピュラー音楽史に残るアーチストであることは否定しようがないでしょう。

アバを聴くなら、写真の日本盤ベストの2枚組CDに尽きます。ほぼ全部のヒット曲が、年代順に収められています。歌詞カードを見ながら聴いていくと、4人の悲喜こもごものドラマが伝わってくるようです。ちなみにヒット曲「ブーレ・ブー」(79年)のロングバージョンもおまけで入っています。