
リメイクや新バージョンという修正を加えずにオリジナルとして「80年越え」を果たした曲を、私が思いつくまま挙げれば、まずダン・ハートマン「リライト・マイ・ファイア」です。79年の終わりごろ、米ディスコチャートで6週連続1位という大ヒットとなったのですが、80年代以降もずーっと、盛り上がりタイムにプレイされていました。
この曲はもう「古典」の域ではないでしょうか。90年代以降のダンス・シーンは詳しくは語りませんが、「ダンスクラシック」イベントではなく、普通のクラブのフロアで今、かかっていても不思議ではないと思います。
あとは、D.D.サウンド「カフェ」(79年)、ドナ・サマー「ホット・スタッフ」(同)、ドナ・サマー&バーブラ・ストライザンド「ノー・モア・ティアーズ」(同)も、80年を越してけっこう聞きました。
こう見ていくと、発売年は79年がやっぱり多いようです。このころから、電子ドラムがかなり使われるようなって、音の厚みや構成が、80年代以降の電気仕掛けの曲にもしっくりつながるという理由もあるのだと思います。生ドラムと電気ドラムって、つないでいくとどこか違和感があるものです。テンポも合わせにくいですし。
現在の「ダンクラ」パーティーのように、当時のオールディーズだけをかける場所であれば問題はないのですが、普通、ディスコの曲は日々、次から次へと生まれ、新陳代謝が激しいわけですから、たとえ数ヶ月であっても生き残るのは大変だったはずです。
長年、支持される曲は、そもそも完成度が高いという証拠なのだと思います。とりわけリライト・マイ・ファイアは、私もディスコの「通算トップ5」に入れたいほどの曲です。
もともと人気ロックグループのヴォーカリストだったダン・ハートマンと、ゲストヴォーカリストのロレッタ・ハロウェイの迫力ボイスの掛け合いが、聞く者を否応なしに「踊りモード」にしてしまう。70年代ディスコ特有のオーケストラ演奏の美点もきちんと生かされた、まさに名曲だと思っています。
ダン・ハートマンはこの曲以降、例えば「アイ・キャン・ドリーム・アバウト・ユー」のように、ディスコにとどまらず、ロックのエッセンスも取り入れたヒット曲をいくつか出しています。プロデューサー、作曲家としてもたくさんのヒットを世に送り出しました。
しかし、またしても、この人も早世でした。94年に43歳でこの世を去っています。遺産としての彼の名曲が、今も生き続けているわけですな。
写真はダンハートマンのベスト盤。ロングバージョンがたくさん入っていて、入門盤に最適だと思います。