The Isley Brothersゴスペル、ドゥーワップ、リズム&ブルース、ソウル、ファンク、ロック、ディスコ、AOR、ヒップホップ……と、半世紀以上にわたり、これだけ多数のジャンルに多大な影響を与えた続けたグループといえば、アイズレー・ブラザーズ以外にはあまり見当たりません。

文字通りアイズレー兄弟が中心となり、1954年に結成。なんとエルビス・プレスリーがデビューしたのと同じ年です。最初はゴスペルグループとして活動を始め、3年後にに故郷のオハイオ州シンシナティからニューヨークに移り、当時流行のドゥーワップ・グループとして頭角を現しました。59年には最初のヒット「Shout!」をビルボード一般チャートにチャートインさせています。

62年にはソウル/ロックの定番「ツイスト・アンド・シャウト」がR&Bチャート2位に上昇。人気を不動のものとしました。60年代前半には、売れる前でカネのなかったジミー・ヘンドリックスやエルトン・ジョンを兄弟の自宅に住まわせたり、レコーディングやツアーに参加させたりしていました。

その後、所属したモータウンレーベルとの関係が悪くなり、プロモーションに力を入れてもらえないなどの苦労をしたものの、「It's Your Thing」(69年、R&Bチャート1位)を自分たちで作ったレーベル「T-Neck」からリリースしたあたりから、再び軌道に乗り始めました。

74年には「Live It Up Part1」(R&B4位)、75年には「That's Lady」(R&B2位)、「Fight The Power」(全米ディスコチャート13位)というダンサブルなシングルをヒットさせています。「ディスコなアイズレー」はこのあたりから全開となります。77年の「The Pride (Part1)」(R&B1位)以降は、それまでのロック色を一掃し、野太いベースやキーボードを前面に出した彼ら特有のファンク/ディスコ路線を突っ走っていくわけです。

79年に出した2枚組アルバム「Winner Takes All」は、ディスコ風味たっぷりで、私の一番のお気に入りです。大ヒットしたミディアムダンサー「I Wanna Be With You」(R&B1位)や、いかにもディスコなアップテンポダンサー「It's A Disco Night」(同27位、ディスコチャート44位)は、押しも押されぬダンスクラシックですね。とはいっても、いわゆる「ドンドコ、ドンドコ」ディスコとは一線を画しており、彼らのベテラン・ソウルグループとしてのこだわりを一応、感じさせています。

80年代に入ると、兄弟間の確執が生じてしまい、84年から数年間、一部メンバーが離脱して「アイズレー・ジャスパー・アイズレー」を新たに結成するなどの混乱期がありました。それでも、ヒット曲はコンスタントに出していて、83年には「官能スローダンサー」の名曲ともいえる「Between The Sheets」がR&B3位まで上昇しています。

実は、この「分裂アイズレー」の方も面白い。本家よりもっとシンセサイザーを駆使したダンサブルなバンドで、「Caravan Of Love」(チークタイム用スローテンポ)、「Kiss And Tell」(ピークタイムでもイケるアップテンポ)といった良質なフロアヒットを出しています。私もディスコでよく聞いたものです。

それにしても、細かなメンバー交代を繰り返しつつ、21世紀に入っても現役でやっている点は特筆すべきでしょう。2001年には、Rケリーのプロデュースによる「Contagious」という曲が、全米一般チャートの19位まで上昇しています。50年代の「Shout!」から2000年代まで、ビルボードのチャートヒットを出し続けているグループは、ほかにいないのです。

写真は、「Winner Takes All」のCD(CBSレコード)。全14曲が完全収録されており、音質も良好です。正直、アイズレーさんたちはあまりにもキャリアが長すぎて、私も知らない曲がたくさんあります。「ディスコからアイズレーブラザースに入門しよう」という人(普通はいない)は、このCDから聴き始めるとヨイでしょう。