Olivia Newton-Johnオリビア・ニュートン・ジョンは、ビージーズと同様にイギリス生まれオーストラリア育ちです。元英国高級軍人の大学教授を父に、ノーベル賞を受賞した物理学者マックス・ボルン氏を母方の祖父に持つエリート家庭のお嬢様でもあります。

オーストラリアに住んでいた10代半ばのころ、故郷のイギリスに渡って新人歌手のオーディションを受けて合格しデビュー。以来、70年代を通してイギリス、アメリカ、オーストラリア、そして世界中で大人気のポップ、カントリー歌手、さらには女優として活躍しました。

アメリカでは、70年代はとりわけカントリー歌手としてもてはやされました。「アメリカ生まれじゃないのに!?」と反発の声も出ましたが、その歌声とルックスによって大ヒット曲を連発し、こうした疑問の声をかき消してしまったわけです。

70年代の代表曲は、日本でもおなじみの「そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)」(74年、全米一般チャート1位)ですね。「愛の告白(I Honestly Love You)」(同、同)もグラミー賞「レコード・オブ・ザ・イヤー」を獲得するなど、名曲の一つとして数えられます。

70年代後半になると、彼女の「可憐な隣の美人お姉さん」的なキャラにも陰りが見えてきて、セールスが落ちました。そこでイメージチェンジのため、青春映画「グリース」にジョン・トラボルタとともに主演し、活発な女子高生役を演じたところ、再びブレイク! サントラで歌った「You Are The One That I Want」(78年)で、ビルボード1位に返り咲いたというわけです。ただし、このころには既に29歳になっていたので、「女子高生役」にはかなり無理がありましたが。

キャラ変えを果たし、「今度はディスコだ!」というわけで、次にディスコソングをフィーチャーしたファンタジー映画「ザナドゥ」にも主演。サントラでは、彼女が歌った「マジック」が全米一般チャート1位、「ザナドゥ」が同6位になりました。

この映画が公開されたのは80年ですから、既にディスコは下火でした。でも、恐れを知らない彼女は、さらに肌を露出するセクシー路線へと急旋回し、ディスコ道を突き進むのです。

翌81年、彼女はアルバム「フィジカル」(上写真。邦題はちょっと意味不明な「虹の扉」)を発売し、これがとてつもない大当たりとなりました。シングルカットされたダンサブルな表題曲は、なんとビルボード一般チャートで10週連続1位! 2枚目のシングルカット「メイク・ア・ムーブ・オン・ミー」も5位まで上昇したのです。私自身はディスコに行き始める直前でしたので、フロアで聞いた記憶はありませんが、ラジオの深夜放送やFMなどからはしつこく流れていたのを思い出します。

このように遅ればせながら“ディスコ化”して、大成功した珍しい例ではありますが、この人の場合、80年代のアメリカではもう禁句となっていたそのものズバリの「ディスコ」をうま〜く回避したところに勝因があります。

ジャケ写真を見てお分かりの通り、ヘアバンド(ねじり鉢巻ではない)、レッグウォーマーに象徴される「エアロビクス大作戦」を展開したのですな。同時期に彼女が歌って踊る「フィジカル」のビデオも発売されています。同じダンスでも、「直球ディスコ」から、流行の「エアロビ」に微妙に座標軸をずらしたのです。

いやあ、これなら「ディスコだべ〜」と後ろ指さされないで済みます。実際、当時のアメリカでは、彼女の影響により、ヘアバンド姿のファッショナブルな男女が、街角のストリートにも溢れ出たと伝えられます。

けれども、オリビアさんの怒涛のような活躍も、だいたいここまでです。この後、セクシー路線が飽きられたり、結婚して子育てに集中したりして、セールスは急下降。ディスコ的にはアップテンポなシンセポップ「Twist Of Fate」(83年、ディスコチャート51位)などがあり、私も札幌のディスコで耳にしたことがあるのですけど、もはや往時の勢いを失っていきましたとさ。それでも、カントリー/ポップ時代、ディスコ(エアロビ)時代と大ピークが2度もあったわけですから、キャリア的にはこれで十分でしょうね。

90年代前半には、乳がんに罹患していることがわかり、克服後は「乳がん撲滅運動家」としても活動するようになりました。このころに離婚もしています。さまざまな人生経験を積んだ結果、曲調は癒し系かつスピリチュアルになり、かつての元気いっぱいな雰囲気ではなくなりました。

この人のCDは、ベスト盤を中心にたくさん発売されています。ディスコの代表盤「フィジカル」は国内盤でも出ています。ちなみにフィジカルの12インチバージョン(仏盤)は、7分以上あってなかなかの出来なのですが、これは今では非常にレアになっています(YouTube動画。ただし賛否両論の(?)ハードゲイバージョンで未成年者禁)。

最後に、最近見つけたオリビア、アンディ・ギブ、アバの「夢の競演モノ」のYouTube動画(2分割)を張っておきます。いやあ、みんな若いっす…。