Frankie Valliビージース、オリビア・ニュートンジョンに続いて登場するのは、フランキー・ヴァリ。彼最大のヒット「グリース」(78年、全米一般チャート1位)はバリー・ギブの作曲ですし、その曲はそのまんまオリビアの主演映画「グリース」の主題歌となっております。

37年米国生まれのフランキーさんは、「シェリー」(62年、同1位)などのヒットで知られる男性ボーカルグループ「フォー・シーズンズ」の中心ボーカリストでした。ソロとしても60年代から活躍しており、アメリカを代表する名ボーカリストといえます。67年には大定番ディスコのオリジナルの「君の瞳に恋してる」をヒットさせています。この曲は全米2位まで上昇しましたが、ディスコ風ではまったくなく、バラード調です。

本当の転機となったのは、プライベートストック・レーベルから75年に発売したソロアルバム「Close-Up」でした。この中に10分を超す長尺ディスコ曲「Swearin' To God」(全米一般6位、ディスコ4位)が入っており、以後、ディスコにかなり傾倒していくわけです。

アルバムでいえば、翌76年にはパティー・オースティンのボーカルも入った「Our Day Will Come」(ディスコチャート10位)を収録した「Our Day Will Come」、78年には前述の「グリース」を収録した「Frankie Valli...Is The Word」をリリース。さらに79年には「Boomerang」などのディスコ曲が入った「Valli」、80年にはもろディスコの「Soul/Heaven Above Me」(同11位)を収録した「Heaven Above Me」をリリースしています。

この人の特徴は、なんと言ってもキーの高い特徴的な歌声でして、バラードでこそ本領発揮するタイプです。上記のディスコ期アルバムにもバラードはたくさん入っています。ディスコとはいっても、やや形容矛盾ですが上品な「ディスコ・バラード」の雰囲気があります。

私の知人で、多くの新人アーチストを育ててきた東京の老舗ライブハウスの店長さんは、「成功する男性歌手は総じてキーが高い」と話していたことがあります。確かに、キーが高い70−80年代の著名男性ボーカリストは、ドン・ヘンリー(イーグルス)、フィリップ・ベイリー(EW&F)、マイケル・ジャクソン、スティーブ・ペリー(ジャーニー)、ピーター・セテラ(シカゴ)、フレディー・マーキュリー(クイーン)などなど、ジャンルを問わず枚挙にいとまがありません。理由についてはきちんと取材しなければいけませんが、高音男性の声はよく伸びて、耳に心地よく響くからなのでしょうか。

バリー・ホワイトとか、アイザック・へイズとか、はたまたエルビス・プレスリーとかフランク・シナトラとか、低音バリトンの魅力を売りにする歌手もいるにはいました。でも、例えば、日本でも小田和正とか山下達郎などを聴いても分かるように、成功している歌手には声が高い人が多いことに気付きます。

フランキーさんの声には、米西海岸ロック、ポップス、ソウル、AOR、カントリーの要素もある。曲をじっくり聴くと、バリー・ホワイトを白人ファルセット風にした感じもあります。ディスコ時代にしても、単なるドンドコディスコに留まらず、非常に多様な曲調を取り入れることができた人だと思います。

フランキーさんのディスコ時代のソロアルバムは最近、アメリカの「Collectors' Choice」というレーベルから、CDで立て続けに再発されています。写真はその一つで「Frankie Valli...Is The Word」と「Heaven Above Me」が1枚のCDに収められています。「Our Day Will Come」とか「Close-Up」など、ほかのアルバムもCD化されました。日本でも手に入りやすいので、こりゃおススメですわな。