エディーグラントロックものに少し飽きたので、今宵はレゲエ・ディスコのエディ・グラントと参りましょう。

レゲエといえば、私などは夏の海をイメージするわけですが、日々冷気が強まる今のような季節に聴くのもまた一興。ズンチャ♪、ズンチャ♪ってな具合でちょいと気の抜けたビートに身をゆだねれば、能天気にうまく世の中を渡りきれる錯覚に陥ることでしょう。

レゲエといえばまずはボブ・マーリーですけど、彼のラストアルバムからのシングルカット「Could You Be Loved」(80年、米ディスコチャート49位)が少しディスコで受けた程度で、あとはまさに「もろレゲエの帝王」状態なので除外です。

でも、80年前後には、その周辺からいくつかディスコっぽいのが登場しました。代表例がエディさんだというわけです。

この人は南米ガイアナの出身で後にイギリスに移住。もともとイギリスの人種混成グループ「The Equals」の中心メンバーとして活躍していたのですが、77年のソロアルバム「Walking On Sunshine」で鮮烈ディスコデビューを果たし、中でも表題曲がフロアの定番となりました。

「Walking…」は82年、売れっ子ディスコプロデューサー&リミキサーのアーサー・ベーカー肝いりのグループ「Rockers Revenge(ロッカーズ・リベンジ)」がリメイクして大ヒット(米ディスコチャート1位)させています。

さらに、78年に12インチシングルとして発売された「Nobody's Got Time」も70年代のエディさんを象徴するディスコ曲です。90年代のハウスミュージックを思わせるミニマルなインストバージョン「Time Warp」も、世界中のディスコで大人気となりました。

「Walking…」と「Time Warp」は、当時のアメリカを代表するニューヨークのディスコ「パラダイス・ガラージ」で、カリスマDJのラリー・レヴァンが盛んにプレイ。後に「ガラージ・クラシック」と呼ばれる2曲となりました。精紳を解放する“脱力音楽”を持ち味とするため、熱いフロアでは逆に今ひとつ盛り上がらなかったレゲエに対し、しっかりとステップを踏めるようにビートをはめ込んだ点が、フロア受けした要因でした。

エディさんはその後、82年に発売したアルバム「Killer On The Rampage」で頂点に達します。レゲエでは珍しかったうねうねシンセサイザー音を取り入れたシングルカット曲「Electric Avenue(エレクトリック・アベニュー)」が、全米一般チャート2位、ディスコチャート6位まで上昇し、レゲエ系トップミュージシャンとしての地位を不動のものとしました。

エレクトリック・アベニューの特徴は、なんといっても「シンセサイザーをいじりながら即興で作った」と本人が認めるほどの、レゲエらしいイイ加減かつ斬新な曲調にあります。シンセ音も昔ですからチープですし、決してノリが良いとはいえないけれど、私も初めてディスコで聞いたときには、「次はどんなうにょうにょ効果音が入ってくるのだろう」などと期待しつつ、ディープでドープな幻惑の音楽に少々頭がクラクラしてしまいました。

その後、エディさんは同じアルバム「Killer…」からもっともろレゲエの「I Don't Wanna Dance(アイ・ドント・ワナ・ダンス=もう踊りたくねえ〜)」のディスコ用ゆるゆる12インチシングルを出し、さらには大方の意表を突き、いきなりの陽気アップテンポでこっちも面食らった「Romancing The Stone(ロマンシング・ザ・ストーン)」(84年、ディスコチャート12位)といったダンス曲を発表。あとは人気も下火となり、文字通り海のもずく、否、もくずとなってしまったのですが、「レゲエってディスコでも案外いいじゃん」と最初に思わせた立役者であることは間違いありません。

彼のアルバムは近年、けっこうCDで再発されております。写真の代表作「Killer On The Rampage」も、昨年、「エレクトリック…」などの12インチバージョンが収録されたDVD付き豪華欧州盤(デラックス・エディション)が発売されています。

次回もレゲエと参ります。