Heaven 17沈滞ムードの夏枯れ8月。第343回記念(中途半端)の今回は、起死回生を図るべくイギリスの3人組「ヘブン17」で〜す。

私にとってはまず、この人々においては「We Live So Fast」(1983年)であります。言い換えれば、「人生は短い(Life is short.)」……。なんだか沁みます、泣けます、せつな過ぎる。

がしかし、その実体は、「人生は短い。時間を無駄にするな。だから急げ、進め、行動せよ!」……そんな「窮地から一転、あおり系ディスコ」なのです。ネット社会の到来で、何事も急ぎ足になってしまった21世紀を既に暗示しているかのようです。同時期に活躍したブロンスキ・ビート(以前の投稿参照)の“お急ぎディスコ”「ヒット・ザット・パーフェクト・ビート」にも近い感じです。

この曲は、故郷札幌のディスコでよく耳にしました。文字通り、せわしないことこの上ないのですが、踊っていてたいそう楽しい曲でした。勇躍、そして欣喜雀躍。魂が天空を突き抜けます。よお〜し今宵はすべてを忘れて盛り上がるぞい! ってなわけで、この曲がかかると嬉しかった。

と、ここで冷静になって、耳を澄まして聴いてみる。すると、どうでしょう。当時としては相当に斬新で深みのあるシンセサイザーの音色、畳み掛けるビート進行、そして何よりも、バリトン系のよく通るボーカル(Glenn Gregory)&調和のとれたコーラスが、かなりの美的センスを漂わせているのが分かります。

それもそのはず、彼ら3人のうち2人までが、80年代前半に世界のヒットチャートを席巻した英シンセ・ニューウェーブの雄「ヒューマンリーグ」の出身。演奏、曲作りともに、大衆受け万全の“大ダンスポップ祭り”の系譜を受け継いでいるのでした。加えて、モータウンやアースウィンド・アンド・ファイヤーなどの黒人ダンスミュージックの要素も随所に取り入れているのが特徴です。

ただ、チャート的には、出身グループと比べると残念ながらいまひとつ。写真のアルバム「ラグジュアリー・ギャップ(Luxuary Gap)」(83年)と、そのシングルカット「Let Me Go」(米ディスコチャート4位)と「Temptation」(同34位)などが目立つ程度です。

私の好きな「Live So Fast」もこのアルバムに収録されていた曲です。つまり、ディスコ的には、このアルバム1枚あれば、まずはヘブン17を十分堪能できることになる、と思っています。まずまずメジャーな人々ですので、再発CDも輸入盤ですがちゃんと出ています(しかも安価)。