robin_gibb今回は「典型的なディスコアーチスト」の予定でしたが、ちょっと趣向を変えてロビン・ギブさんです。というのも、最近、オークションサイト「eBay」で入手したCDが「ヘン過ぎた」からでございます。

とにかくまずは、ロビンさんのバックグラウンドについて。言うまでもなく、「サタデーナイト・フィーバー」で一斉を風靡し“最強白人ディスコ野郎”として鳴らした、バリー、ロビン、モーリスのビージーズ三兄弟の一人で、1949年英国マン島生まれ。彼らには70年前後のフォークっぽい「ポップロック時代」と70年代後半の疾風怒濤の「大ディスコ時代」の二回のピーク期があったのですが、ロビンは前者のころ、バリーが後者のころのリードボーカルを務めました。

ロビンさんは80年代に入ってソロ活動を強化。「How Old Are You?」(82年、シングルカットされた「Juliet」)、「Secret Agent」(84年)と2枚のアルバムを立て続けに出しました。いずれもシンセサイザーを駆使した「80年代風ディスコ」の内容になっておりまして、私もずいぶんとFMラジオで耳にしたものでした。特に、「Secret Agent」からのシングルカット「Boys Do Fall In Love」は「明るく正しい80年代ディスコ」でして、ヒットチャートにも入りました(米ビルボード一般37位、米ディスコ8位)。

当時は日本でもかなりの人気でした。私もディスコで、ロビンさん独特の高音による「ボボボボ〜イズ、フォーリンラブ〜♪」という間抜けで陽気なメロディーを聞いた覚えがあります。

この2枚は一時期CDにもなったものの、廃盤になってしまい非常に希少になってしまっています。私も「あなた何歳?」のトホホなタイトル「How Old Are You?」しか持っていなかったのですが、先日、たまに使っている海外のeBayで、日本盤の帯みたいなのが付いた「Secret Agent」のCDを2000円程度で見つけたので購入してみたところ、海賊盤(非正規盤)とおぼしきヘンなシロモノが送られてきたのでした。

まあ、私も20年以上かけて5000枚ほどのCDを集める中で、中古店や通販で、非正規品らしきものも何枚か買わされた経験はあります。もちろん正規盤が普通にあれば、音質も全然違いますしそっちを買いますが、それが長く廃盤になっている上に、通販ウェッブサイト上の情報では中古品の正規、非正規の見分けがつかないなどして、しかたがない面もあるのです。

さて、今回購入してみた「Secret Agent(シークレット・エージェント)」はなぜか紙ジャケット入りで、中身は汎用品のCD-Rではなく、異常に音質がよい本物の音楽CDでした。ただし、購入先はイスラエルの販売者だったはずなのに、届いた郵便包装紙をみると「from Russia」となっていて戦慄を覚えました。

いやあ、ロシアというのは、70-80年代のディスコ好きが多いことでも知られているのですが、同時に、メキシコなどとともに、この手のディスコ系CDでは「海賊盤王国」として海外のCDフリークの間でも有名だったからです。

とりわけモノ書き的興味がそそられたのは、盤の精巧さ以上に、なぜか日本語で書かれた帯とライナーノーツです。帯には「Secret Agent」を直訳したと思われる「間諜」の文字(写真)。「間諜」とはスパイのことで確かに正しい訳ではあるのですが……にしても表現古っ。「戦国時代じゃないんだから!!」と突っ込みたくなります。粋なサングラスをかけたロビンさんが、戦国の名将・武田信玄らが暗躍させたスパイ(忍者)であり、マスコミの「素っ破抜く」の語源ともされる「すっぱ」にでもなったのかと驚きます。

ライナーノーツもひどい。1曲目のかの「Boys Do Fall In Love」の邦題「恋するボーイズ」(これもトホホな題だが)が、ちんぷんかんぷんの「恋に男の子か秋」(!)となっていてアゴが外れそうになりました。たぶん、再発CDが大好きな日本人をターゲットにして、自動翻訳ソフトの類を使って訳したのだと思われます。

続く2曲目は「In Your Diary」が「あなたの日記で」(微妙)、3曲目「Robot」が「ロボット」(問題なし)、4曲目「Rebecca」(問題なし)、5曲目「Secret Agent」が「間諜」(…)、6曲目「Living In Another World」が「リビング別の世界で」(?)、7曲目「X-Ray Eyes」が「X線眼」(なんか怖い)、8曲目「King of Fools」が「愚者の王」(微妙)などとなっております。

ライナーノーツもあな恐ろしや。これも自動翻訳の類だと思われますが、冒頭からして「双子の兄のモーリス・ギブと兄のバリーギブとともに、ロビンギブ、人気の70年代と80年代のバンドの3番目のメンバーだった、ビージーズ。彼らのアルバム、100以上の100万枚を販売している。…」と、アイルランド人作家ジョイスの空前絶後の奇天烈小説「フィネガンズ・ウェイク」も真っ青の意味不明な展開となっております。ほかにも、ビージーズの初期の代表曲「ニューヨーク炭鉱の悲劇」(原題はThe New York Mining Disaster 1941)」が、「ニューヨーク鉱山災害1941」と勝手に硬派ドキュメンタリー風に翻訳されてしまっています。

それにしても、ロシア、そしてイスラエルとは一体…。“反イスラム”で連合を組んで、こんな「間諜」を(お門違いながら)日本に放ったのでしょうか。北方領土問題やイスラム圏の独立の動きに対して、近ごろやけに強気でマッチョなロシアですが、その前に「資本主義の基本がなってないんじゃないの?」と問いたいところですね。

もちろん、一介のディスコ好きとしては、ロビンさんの正規CDの発売を待ちたいところです。声質がユニークで、曲調がダンサブルな点は高評価ですし、80年代のほどよく能天気な雰囲気を醸していますので。でも、採算性を考えるとちょっと微妙ですかね。そこがまたトホホ。