
ディスコ界では、常人には理解困難な“大うつけ者ファッション”(例・Cher、Betty Wright、Dee D. Jackson)が流行したわけですが、この人たちもまさに当時、宇宙人みたいに大げさなコスチュームに身を固めた愛嬌たっぷりの8人グループでした。背景には、米ソの超大国による宇宙開発の活発化、1976年に公開された映画「スターウォーズ」の大ヒットがあります。
ただ、外見上はキワモノ要素満載とはいえ、Skyyは狂気の限界をわきまえたディスコ界の常識人でした。音楽的にはとてもきちんとしていて、Brass Constructionのメンバーでもあったランディ・ミュラー(Randy Muller)とソロモン・ロバーツ(Solomon Roberts)を中心とした演奏にはそつがなく、デニス(Denise)、 デロレス(Delores)、ボンヌ(Bonne)のダニング(Dunning)3姉妹のボーカルワークも冴えわたる実力派だったのです。
1970年代半ばにニューヨークで結成した彼らは、70年代後半にディスコ・レーベルとして躍進したサルソウル(Salsoul)・レコードと契約。79年にはデビューアルバム「Skyy」(写真)を発表し、その中から「First Time Around」をヒットさせました。Skyyのグループ名は、既にSkyというグループが存在したため(確かにどこにでもありそうだ)、差別化するために末尾に「y」をくっつけたのでした。
この曲は、ディスコ・リズムの代名詞「シンドラム」を駆使した逸品で、Tamiko Jobnesのヒット曲「Can't Live Without Your Love」にも似た感じで「ぴゅんぴゅん、ぽこぽん!」サウンドが随所に展開するゴキゲンさです。
この人たちはけっこうな多産型グループで、その後は年に1〜2枚のペースでアルバムを発表。80年発売の2枚のアルバム「Skyport」と「Skyway」からはそれぞれ、「Here's To You」(米R&Bチャート23位、米ディスコチャート24位)と「Skyyzoo」(同32位、同41位)などのダンスヒットが生まれました。
特にSkyyzooは、文字通りカズー(Kazoo)という口で吹く楽器を駆使。Freedomの名曲「Get Up And Dance」みたいに「ぶーぶーぶー!♪」と子豚さんみたいなすっとぼけた音が次々と繰り出し、かえって踊り心がくすぐられます。
そして81年、彼らは代表アルバムとなる「Sky Line」を発表し、その中から「Call Me」という最大のヒットを生みました(R&B1位、ディスコ3位)。この曲は下地のヘビーなドラムとベースラインにギターやら電話の効果音やらがうまく乗っかり、そこにデニス・ダニングの声がほどよく絡んでくる佳作でして、ディスコでもよく耳にしたものです。
そのSkyy特有のリズム展開は、後のディスコヒットの「I’ll Do Anything For You」(Denroy Morgan、81年、米ディスコチャート7位)や「Thanks To You」(Sinnamon、82年、同1位)にもモロに影響を与えております。
このアルバムで言えば、「Let's Cereblate」(R&B16位)と、再びカズー音を多用した「Jam The Box」なども印象的。米国ではもはやディスコが過去のものとなる中、アーバンでおしゃれなディスコとして人気を持続させたわけです。ようやく冷静さを取り戻したのか、このころには「お恥ずかし宇宙人コスチューム」からブラコンな普通の衣装に衣替えしてます(下右写真は「Sky Line」のジャケット)。
その後も年1回のペースでアルバムを発表し続けますが、80年代半ばにはセールス的に失速。「もうこのあたりでおしまいかなあ」と思わせた矢先、キャピトル・レコードに移籍後の86年には、「Givin' It (To You)」というシンセサイザーを多用したなかなかにしたたかでシャープなダンス曲をチャート上位(R&B8位)に食い込ませたかと思うと、89年にはなんと、ミデアムスロー・ダンサー「Start Of A Romance」がSkyyにとっての8年ぶりの米R&Bチャート1位に輝きました。
しかも、その同じ年には「Real Love」がまたもやR&Bチャート1位となり、ディスコ出身アーチストの夢でもある「バラードでも大ヒット」を達成したのでした!
90年代にはさすがに息切れしたのか、92年に最後のアルバム「Nearer To You」を発表後はあまり音沙汰がなくなってしまったSkyy。キラキラ宇宙服から出発し、再び星空の宇宙へと旅立っていった感がありますし、結局はR&Bを越えた一般総合チャート上位への進出も果たせませんでした。でも、70年代後半からの約10年間、ディスコグループとしては十分過ぎる実績を残せたといえましょう。
彼らのレコードは、Salsoul時代を中心にほぼ満遍なくCDで再発されています。入門盤としては、主なヒット曲が12インチ・バージョンでがんがん収録されている英Big Break Records盤CD「Skyy – Skyyhigh • The Skyy Anthology (1979-1992)」あたりがお勧めで〜す。
