ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

アース・ウインド・アンド・ファイヤー

ザ・ポケッツ (The Pockets)

Pockets今回も70年代後半のファンク系ディスコから一つ。プラティパスとは正反対に、トランペットやトロンボーンといった「ディスコ盛り上げ隊」のホーンセクションを駆使して、ちょいと人気を博した米国の8人編成グループ「ポケッツ」です。

「天下御免のディスコバンド」アース・ウィンド・ファイアー(EWF)のバンドリーダーである御大モーリス・ホワイトさんは、70年代後半からはプロデューサーとしても活躍しましたが、弟バーディン・ホワイトも、EWFでベースを担当しつつ、プロデューサー業にもせっせと精を出していました。そんな彼が手がけた代表的なバンドが、ポケッツというわけです。

自然なことながら、バンドの楽器編成も曲調もEWFに似ています。それが彼らにとっては個性を発揮し切れなかった要因にもなっているのですけど、ディスコブーム期にはいくつかヒットも飛ばしています。バーデンさんだけではなく、トムトム84(Tom Tom 84)の異名をとる名アレンジャーのトム・ワシントン、80年代にホール&オーツなどのディスコアレンジャーとして名を上げたロバート・ライト(Robert Wright)などの助太刀を得て、ファンキーでグルービーでディスコパラダイスな曲を次々と世に送り出しました。

ファンキーディスコ風味に満ちあふれたデビューアルバム「Come Go With Us」は1977年発売。この中からは、ダンスシングル「Come Go With Me」がまずまずのヒット(米R&Bチャート17位、ディスコ32位)となりました。2枚目アルバム「Take It On Up」も、「パンパカパーン♪!」と終始ラッパが鳴りひびき、やはりディスコな雰囲気が満載で、同名シングル曲「Take It On Up」(R&B24位)は、あらゆる楽器隊が「飲めや歌えや、踊れや踊れ!」てな調子でがんがん攻めまくるいけいけチューンであります。

そして79年に出た3枚目「So Delicious」も…。EWFの「ブギーワンダーランド」にも似たアップテンポ曲で、日本でもダンクラ定番となったシングル「Catch Me」(R&B69位、ディスコ79位)を始め、陽気で能天気でオラオラでわがままなダンス曲が目白押しです。

……けれども、ご覧の通りチャート的には確実に落ち込んでいったのが辛いところ。やはり、EWFの弟分バンドの宿命か、兄貴分の影響があまりにも濃すぎて、実力を十分に発揮できないまま、記憶の彼方に追いやられてしまったようです。EWFの「隠し球バンド」として、文字通り“ポケット”から出られないまま、上記「黄金のディスコトリロジー(三部作)」)を発表した後、あえなく表舞台から消え去っていったのであります。

まあ、このブログお約束の切々たる無常感が再び漂ってしまうわけですけども、ディスコ好きであれば、この三部作はいずれも底抜けに楽しめる、という点だけは強調しておきたいと思います。ディスコ以外のミデアムテンポ、スローバラードも含めまして、手だれが関わった アレンジやミックスはもちろん、メンバー自身のボーカルも演奏も非常にしっかりしております。

CDは“3部作”ともに一応出ておりますが、近年レア化が激しいため、上写真の米Collectablesレーベルのベスト盤「Golden Classics」がお手軽でよいかと存じます。全員純白のスーツで決め決めニヤニヤのジャケットが目印。最も売れた 「Come Go With Me」、疾走感あふれる中間奏も必聴の「Catch Me」のロングバージョンなど、主な代表曲が網羅的に収録されております。

エモーションズ (The Emotions)

The Emotions前回紹介のシスター・スレッジ同様、エモーションズも1970年代後半の米国ディスコ界を代表する姉妹グループ。こちらは1人少なく、シカゴのハッチンソン一家のシーラ、ワンダ、ジャネットで構成する3人組であります。

彼女たちは、幼少時から地元の名ゴスペル・シンガーとして鳴らし、デビューも意外に古くて1960年代後半です。69年、アイザック・へイズのプロデュースで、シングル曲「So I Can Love You」が全米R&Bチャート3位まで上昇するヒットとなりましたが、その後はしばらく停滞しました。

大ブレイクしたのは、70年代後半にアース・ウインド・アンド・ファイヤー(EW&F)のモーリス・ホワイトをプロデューサーに迎えてからになります。76年、ダンスクラシックとしても知られる「I Don't Wanna Lose Your Love」がR&Bで13位、ディスコチャートで4位まで上昇するヒットとなり、ようやく復活を果しました。

翌77年には、あまりにも有名な「ベスト・オブ・マイ・ライフ」(変なYouTubeサンプル動画)がR&Bチャートで見事1位(4週連続)を獲得しました。この曲は、世界中のディスコで、大定番として定着することになります。

勢いはとどまらず、1979年には「EW&F With The Emotions」のクレジットで、これまたキラーチューンである「ブギーワンダーランド」をヒットさせ、人気は最高潮に達しました。

ただ、米国でのディスコブームが去った80年代以降は、再び低迷期に入ります。その落ち込みようはシスター・スレッジ以上で、さまざまなチャートから姿を消していきました。80年代半ばからは、著名ミュージシャンのバックボーカリストなどとして、細々と活動してゆくことになります。

それでも、彼女たちの70年代末期の曲は、今も昔も、すさまじいほどの盛り上がりをフロアに呼び起こします。とりわけ日本では、「ベスト・オブ…」、「ブギー・ワンダー…」、それに「スマイル」(78年)が、まさに御三家。これらの曲は、イントロですぐ「あの曲だ!!」とバレるのが特徴であります。絶好調タイムにうまい具合にかかると、みんな大爆発してましたね。私も若い当時は、汗まみれになって踊ったものでした。

惜しむらくは、名曲「ベスト・オブ…」と「スマイル」、それに「I Don't Wanna Lose Your Love」があまりにも短い(それぞれ3〜4分)ということでしょうか。「ホット・トラックス」という米国のDJミックスレーベルから、海賊版みたいな別バージョンが出た程度で、正規12インチが作られなかったのは、残念なことであります。

エモーションズのCDは比較的たくさん出ています。写真は16曲入りの「The Best of the Emotions」(Sony盤)。なかなか秀逸なバラード(「Don't Ask My Neighbors」など)も含めて、たいていのヒット曲が網羅されております。
プロフィール

mrkick (Mr. Kick)

「ディスコのことならディスコ堂」----本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。1965年北海道生まれのバブル世代。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター/翻訳家。もはや踊る機会はなくなったが、CD&レコードの収集だけは37年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick2000@gmail.com

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*最近多忙のため、曲名質問には基本的にお答えできません。悪しからずご了承ください。
*「ディスコ堂」の記事等の著作権はすべて作者mrkick(菊地正憲)に帰属します。

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