ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

カリプソ

トロピカル・ディスコの数々 (Tropical Discos)

1どど〜んとお盆に入りましたが、まだ大方暑さが続いております。夜半過ぎになっても近くの公園のアブラゼミたちが全力で鳴きまくって宴を楽しんでおりますので、今回はおもむろにトロピカルなディスコをいくつか。

まずはバート・バスコーン(Bart Bascone)!!いきなりお盆らしからぬド迫力な名前ですけど、曲調もけっこう積極的。彼が1979年に発表した左写真のディスコアルバム「ブルーハワイ・ディスコ」(Blue Hawaii Disco)の表題曲はハワイアン音楽をベースにした非常に珍しいディスコで、ウクレレをフィーチャーした軽快ビートが連なり、南国の心地よい潮風を感じさせています。

このアルバムには、「My Hawaii」という曲もあって、こちらはハワイアンミュージックの打楽器乱れ打ちの中間奏が小気味よい。ハワイアンとディスコの相性は特別良好というわけではないですけど、その試み自体は評価しておきたいと思います。ただし、あまりに珍盤で、CDは発売されておらず、レコードでもあまりお目にかからない変り種ディスコとなっております。

あと、南国ディスコの類いとしては、1970年代後半に出てきたリスコ・コネクション(Risco Connection)というグループもあります。以前にも少し紹介したレゲエディスコの系統でもかなりレアなグループ(それとこれあたりもご参照)。ニューヨークにあった人気会員制ディスコ「The Loft」の「ロフトクラシック」として知られるカリプソバージョンの「Ain't No Stoppin' Us Now」という代表曲があります。こちらは4年前、グループの12インチ音源集のCD「Risco Connection」(Musica Paradiso盤)が発売になっております。

この「Ain't No…」もそうですが、この人たちは既存のディスコのヒット曲をしっぽりとレゲエ(カリプソ)風にリメイクするのが得意でした。シックの大ヒット「グッド・タイムズ」やインナーライフの「アイム・コート・アップ」のカバーもやってます。いずれも、うんと激しく盛り上がるわけにはいかないにしても、のんびりとすまし顔で聞き流しつつ、気が向いたら手足や腰をくねくねと動かしてリズムに乗ってみたい、という人向けの曲調です。緩急自在なディスコワールドの中でも、極めて「緩」系のサウンドになっています。

さて、お次は下写真の「Disco 'O' Lypso」。プエルトリコのレコード会社Trans Airから4年前に発売されたCD。カリブの70年代後半を中心としたほとんど誰も知らないディスコ曲が収録された、ひなびた感じのコンピレーションになっています。しかし、「Disco」の単語が随所に出てくる上に、かなりファンキーな力作が多くて楽しめます。

もちろん、トレードマークのスティールドラムも、レトロなオルガンも、おとぼけ「ウホホホホホホ!」音でお馴染みのクイーカ(Cuica)も全開。幻惑のレゲエファンクであるタッパ・ズッキーの「フリーク」とか、ザ・ビギニング・オブ・ザ・エンドの名曲「ファンキー・ナッソー」のリメイク「Nassau's Disco」なんてゴキゲンな曲も入っています。

まあ、このあたりは基本的には70年代のソウル&ファンク&レゲエの正統派ですので、ディスコの真骨頂であるおバカさ加減についてはあまり望めないわけですが、とっても渋くて夏らしくて趣があると思います。世界のすみずみまで「DISCO」が行き渡っていたことを改めて実感する次第です。
Disco O Lypso

T‐コネクション (T-Connection)

T-Connection
特別にどうだってわけではないのですが、夏場にはTコネクションを聴きたくなります。バハマ諸島出身の男性グループで、70年代後半にディスコヒットを連発しました。

1975年、地元のカリプソバンドでマラカスを担当していたテオ・コークリーという人物が中心になって結成。人気が出たためマイアミに移り、そこのディスコレーベルであるTKレコードと契約し、ディスコブームの波に乗りました。

最初にヒットしたのは、76年の「ディスコ・マジック」(全米ディスコチャート10位)。その後、「Do What You Wanna Do」(77年、同1位)、「77年、On Fire」(5位)、「78年、Let Yourself Go」(7位)、「At Midnight」(79年、3位)とかなり好調だったのですけど、アメリカでのディスコブームが終わると影が薄くなりました。

ただ、81年にメジャーレーベルのキャピトルに移ったため、「Everything Is Cool」(81年、全米R&Bチャート10位)をはじめ、そこそこのヒットを出してはいます。

ディスコ時代にはパーカッションやキーボード(クラビネットか?)を駆使した、いかにも南国風なノリを持ち味としていたのですが、キャピトル移籍後は、わりと軽めなシンセファンクな感じに変化しています。けれども、この分野にはレイ・パーカーとかクール・アンド・ザ・ギャングとかダズ・バンドみたいな大御所がわんさといましたので、埋没してしまったと思われます。

というわけで、彼らは断然、70年代の音の方がよい。なんといってもコンガなどのカリブ系パーカッションが彼らの真骨頂です。中でも、At Midnightの12インチでは、全部で約9分50秒あるうち、最初の3分あまりが「これでもか!!」という感じでパーカッションが炸裂するイントロになっています。メロディーラインも哀愁調で、なかなか印象深い曲です。

写真はホットプロダクション盤のベストCDで、TK時代の主なヒット曲が網羅されています。ジャケットは、At Midnightが入っていたアルバム「T-Connection」のものを使用しています。キャピトル時代については、あまりCD化はされていません。
プロフィール

mrkick (Mr. Kick)

「ディスコのことならディスコ堂」----本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。1965年北海道生まれのバブル世代。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター/翻訳家。もはや踊る機会はなくなったが、CD&レコードの収集だけは37年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick2000@gmail.com

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