ABC今年も、北国育ちにとっては酷暑がこたえる季節となりましたが、そんな逆境もどこ吹く風、今回も英国ニューウェーブなおもむきでABCと参りましょう。

1980年にマーティン・フライ(Martin Fry)らが中心となって活動を開始したグループで、シンセサイザーを駆使したダンスミュージックをがんがん繰り出していました。

代表曲はなんといってもデビューアルバム「The Lexicon Of Love」に収録されていた「The Look Of Love」(全米ビルボード一般チャート18位、ディスコチャート1位)でして、ぶりぶりシンセサイザーにサックスの音色がほどよく絡み、そこにマーティンの情熱的なボーカルが乗っかってきます。おまけに「ピンピンポンポン!♪」とハープの音なんかもうっすらと入ってきて、なかなか個性的な音作りをしていました。

この曲は、アメリカの音楽番組MTVでよくオンエアされていたプロモーション・ビデオ(PV)も印象的でした。往年のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」を模した底抜けにカーニバルかつフェスティバルなメルヘン動画となっており、お子様でも安心して楽しむことができます。

アルバムのプロデュースは、数多くのアーチストのヒットアルバムを手がけた売れっ子プロデューサーのトレバー・ホーン。収録曲からの2枚目のシングルカットとなった「Poison Arrow」(一般25位、ディスコ39位)も、まずまずのヒットを記録しました。

このころは、アメリカのヒットチャートにイギリス産音楽が続々と進出していった「第2次ブリティッシュ・インベージョン」の時期にあたります。曲調的には、同様に80年代半ばに人気が出たスパンダー・バレエとかフランキー・ゴーズ・トゥ・ザ・ハリウッドなどとも似たところがありますが、やはりマーティンのボーカルに最も特徴が出ているグループです。

さらに、1985年にリリースした3枚目のアルバム「How To Be A Zillionaire!」からは「Be Near Me」(米一般9位、ディスコ1位)やサンプリングエフェクトをちりばめた「(How To Be A) Zillionaire」(同20位、同4位)、「Vanity Kills」(同91位、同5位)が、1987年にリリースした「Alphabet City」からはスモーキー・ロビンソンへの敬意を込めた「When Smokey Sings」(同5位、同1位)といったヒットを飛ばしています。いずれもボーカルとシンセサイザー、ホーンセクション、ドラムビートがうまく調和したスタイリッシュな佳作ぞろいとなっており、躍り甲斐があります。当時のディスコでも頻繁に耳にしたものでした。

CDは、各アルバム、ベスト盤ともに一応発売されておりますが、一部レア化して高騰しています。