
結成はなんと1954年。日本がまだ戦後の混乱期にあったころです。文字通りフィラデルフィア出身のハロルド・メルヴィンさんを中心にした男性ボーカルグループで、60年代まではパッとしなかったのですが、70年代初頭からディスコ系のヒットを連発して一躍トップスターになりました。
メジャー化の原動力になったのは、ちょうど70年にメンバーとして加わったテディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)でした。もともとはドラマーだったのですが、類まれなる甘〜〜〜いバリトンの声の持ち主で、この人の歌声を聴く者はみんなメロメロ状態になってしまったのです。
彼の加入の2年後には、その後の米国ディスコの流れを決定づけるパイオニアレーベルで、名ディスコ仕掛け人であるギャンブル&ハフ(Gamble & Huff)が率いる「フィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ(PIR)」と契約。「I Miss You」(72年、R&B7位)、「If You Don't Know Me By Now」(72年、同1位)という「とろ〜りはちみつ」なバラードで軽くジャブを飛ばした後、いかにもフィリーなディスコ曲「The Love I Lost」(73年、R&B1位)を大ヒットさせ、後に大爆発するディスコブームの到来を大いに予感させたものでした。
PIRからの3枚目アルバム「Wake Up Everybody」からは、テルマ・ヒューストン(Thelma Houston)も歌った「Don't Leave Me This Way」(75年)とか、「Wake Up Everybody」(75年、R&B1位)というディスコヒットが生まれました。
さらに、同じ75年に出した4枚目のアルバム「To Be True」からは、「Where Are All My Friends」(R&B8位、米ディスコチャート11位)と「Bad Luck」(R&B4位、ディスコ1位)というディスコシングル曲をリリースしました。特にBad Luckはディスコチャートで11週間も続けて1位になる特大ヒットになっています。
ダンス系とバラード系のヒットをバランス良く出しているのが、この人たちの特徴でもあるわけですが、それもこれも「テディの美声」あればこそ。アップテンポでもスローテンポでも、彼の声はいつでも耳に心地よく響きます。天賦の才とはこのことでしょう。
しかし、グループとしての一体感は、いつの間にか損なわれていきました。案の定、あまりにも「おお!テディ、ソーグーッド!」ともてはやされたために、とりわけ長年のリーダーであるハロルドさんとテディさんの関係がしっくりこなくなってしまったのです。自信あふれるテディ自身も、「コンサートやレコードで、自分の名前をもっと前面に出してほしい」などと強気に迫ったとされ、火に油を注ぐ形になりました。
結局、「To Be True」を最後にテディさんはソロに転向し、その後もヒットを飛ばし続けました。残されたメンバーは、もちろん活動を続け、70年代後半以降も「Prayin'」(79年、R&B18位)、「Tonight's The NIght」(同61)、「Hang On In There」(81年、同51位)みたいな結構すぐれた軽快ディスコ曲も出したわけですけど、目玉のボーカルを失って一気に存在感は低下。切ないものです。
ところが、好事魔多し。テディさんは82年、交通事故で突然、半身不随になり、歌手活動が著しく制限されてしまったのです。それでも、車いすでライブや慈善活動を続け、88年にはミデアムダンス曲「Joy」(R&B1位、ディスコ42位)も大ヒットさせています。
波乱万丈の歴史を刻んだフィリーディスコの帝王、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ。現在ではハロルド(97年に57歳で死去)、テディ(2010年に59歳で死去)を含めて、ほとんどの主要メンバーが鬼籍に入りましたが、ディスコ史、そしてソウル史においても強烈なインパクトを残したグループだったことは確かです。
CDはベスト盤、アルバム再発ともにけっこう出回っております。上写真は10年ほど前に出たエピック盤「The Ultimate Blue Notes」。価格が1枚1000円前後と非常に手頃な上に、主なヒット曲が網羅されていてお得な感じです。
*イベントお知らせ
12月8日(土)夜、西武新宿線新井薬師駅南口の目の前のバー「ゆんたく」にて、まったりとアホアホなディスコDJパーティーを行います。入場お値段は1ドリンク付き1000円。ご興味のある方は、お気軽にお立ち寄りくださいませ!! 詳細は↓
http://www.facebook.com/events/300433423400391/