ディスコ堂 by mrkick

音楽に貴賎なし ―Discoの考察とCD批評

ドン・レイ

ジャングルな面々 (Jungle Disco)

Kikrokosコンガス、アフロメリカ、バラバス…これら奇っ怪な単語に共通するのは「ジャングル・ディスコ」。まだまだ灼熱の炎暑が続くここ東京ですが、今回はボンゴやらコンガやら動物の鳴き声やらが満載の熱帯ウッキッキー!特集と参りましょう。聴いて踊れば、ますます暑苦しくなることウケアイです。

トップバッターはコンガス(Kongas)。1970年代に活躍したフランスの男性ディスコグループで、セローンドン・レイ(Raymond Donnez)など、ディスコ界そのものに大きな影響を与えた人物が在籍していました。

彼らの代表曲「ジャングル」(74年)は、コンガやボンゴ、ドラムといった打楽器が奏でるジャングルビートが特徴なのは当然ですが、効果音が面白い。「アッキャッキャー!」、「ギャオギャーオ!」、「コロケロコロケロ!」などなど、熱帯の鳥や猛獣やおサルさんやカエルさん、そしてコオロギさんなんかの声がふんだんに盛り込まれています。まさにアフリカの“密林ダンス”の面目躍如たるところですね。

彼らには、イントロでアフリカ部族の歌と踊り、それに不気味な笑い声が入ってきて、あとは変則的なドラム進行で展開する「アフリカニズム/ギミー・サム・ラビング」(78年、米ディスコチャート3位)、「アニカナ・オー(Anicana-O)」(同年、同37位)といったジャングルディスコもあります。

続いては、これまた変わった名前のキクロコス(Kikrokos)。実はKongasの一部メンバーが作ったグループで、78年に「ジャングルDJ」というディスコヒットを飛ばしました(米ディスコ23位)。上写真が、その曲が入ったアルバム「Jungle D. J. & Dirty Kate」。全体の曲調自体からは濃厚なジャングル性を感じませんが、ジャケットからは一目瞭然、やっぱり「ジャングル」がもろコンセプトであることが分かります。

ジャングル系ディスコには、アフロビートはもちろんのこと、同じ熱帯・亜熱帯の地域に根差したラテン音楽の要素も入っていることも多い。前述の「アニカナ・オー」のように、コンガやボンゴの音に混じって、ときおりサンバホイッスルが聞こえてくるような曲も少なくありません。

ほかにもジャングル系ディスコは大量にありまして、ドラムが圧巻のジャクソン・ファイブの「ハム・アロング・アンド・ダンス」(70年)とか、 アフリカの大地に紛れ込んだかのようなジョニー・ウェイクリン(Johnny Wakelin)の「イン・ザイール」、バラバスワイルド・サファリ」(72年)、クール・アンド・ザ・ギャングの「ジャングル・ブギー」(73年、米R&Bチャート2位、米一般チャート4位)、ベイビー・オーの「イン・ザ・フォレスト」(80年、ディスコ2位)、前衛的ディスコを数多くリリースしたZEレーベルのクリスティーナ「ジャングル・ラブ」(80年)などが挙げられます。

私が好きな曲としては、エブリデイ・ピープルの「アイ・ライク・ホワット・アイ・ライク」(71年)、コンティネント・ナンバー6の「アフロメリカ」(78年)、キャンディドの「ジンゴ」(79年、ディスコ21位)なんかにも、ジャングルな感じが色濃く浮き出ています。

さらに、アメリカでディスコブームが終わった80年代前半以降も、ジャングルディスコは不滅でした。パトリック・カウリーの異色作「プリミティブ・ワールド」(82年)や、曲自体はボンゴ満載のジャングルリズムとまではいかないものの、「あそこにジャングルがあるぞ、気を付けろ!」とのフレーズで始まるウォー「ザ・ジャングル」(82年)、プリンスがプロデュースしたザ・タイムの「ジャングル・ラブ」(84年、ディスコ9位)、あの色物王ディバインの「ジャングル・ジェジベル」(82年)、バルティモラのおとぼけチューン「ターザン・ボーイ」(85年、ディスコ6位)をはじめ、数々の“ジャングルなディスコ”が存在します。太古の原始リズム&イメージとディスコって、ことほど左様に非常に相性がよいことが、あらためて実感されるわけであります。

ただし、以上に挙げた曲の多くは、クール・アンド・ザ・ギャングみたいにメジャーな人たちを除いてCD化されておりません。レコードではけっこう手に入りますので、探して一人、クーラーの効いた部屋でミスマッチにジャングルな気分に浸るのもよろしいかと存じます。

ラブ・アンド・キッシズ (Love And Kisses)

Love And Kissesテンション高えぇ……というわけで今回はラブ・アンド・キッシズ。“隠れディスコ王”アレック・R・コスタンディノスがプロデュースした代表的なディスコ・セッション・グループであります。

写真のアルバム「ラブ・アンド・キッシズ」(77年)はこのグループのデビュー盤。収録曲はA「アクシデンタル・ラバー」とB「アイ・ファウンド・ラブ」のみ。しかし、発売直後から破竹の勢いでして、全米ディスコチャートでは見事1位になりました。ボーカル等は皆、無名です。ですから、この作品はほぼ「アレック一色のアルバム」と言って差し支えないと思います。実際、このグループは、数あるアレックプロデュースのアーチストの中では一番、人気がありました。

アレックは1944年エジプト(!)生まれ。ユーロディスコの創始者の一人で、これまで当ブログでも「セローン」「ドン・レイ」「朝日のあたる家物語」などで登場済みです。70年代ディスコを語る上では絶対に欠かせないキーパーソンではあります。とにかくアレンジが非常に上手で、シンセが主流になる前のオーケストラディスコとしては最も成功した一人といえましょう。特にバイオリンを中心とするストリングス・パートには定評があります。ある意味映画音楽のような品格を感じさせる音です。

「アクシデンタル」を今、聴いてみたらホントあげあげアップテンポですね。元気が出ます。さすがはアレック!と言うべきところではありますが、ずいぶんとホコリが被ってきた感もあります。これは、版権を握ったまま再発CDを“許さない”など、彼がディスコな過去を完全に封印しているからだと思いますね。理由はよく分かりません。頑固です。だから海賊盤が作られるなどして、オークションサイトで高値で取引されることになるわけです。

ラブ・アンド・キッシズはこの後、「How Much, How Much I Love You」(78年)という3曲入りアルバムを出し、ディスコチャート5位にまで上がりました。さらに、これもずっと以前に紹介したディスコ映画「Thank God It's Friday」のサントラに名を連ね、存在感を示します。それでも、これで活躍はほぼ終了。ディスコブームの終焉とともに、表舞台からは完全に姿を消しました。

さまざまなディスコものがCD化される中で、アレックものはいまだ置き去りにされています。もはや伝説の域に入った人ではありますけど、このグループのCD化ぐらいは望んでおきたいところであります。一応ここは、「CD批評」の場でもありますからね。

ちなみに写真はCDでして(ジャケはレコードと同じだが)、少し前にオークションで入手したロシア産の海賊盤(?)です。うさん臭さ全開ですが、音質は不思議とよいのです。

コンガス (Kongas)

Kongasほとんど何の脈絡もなく、今回はコンガスを紹介しようと思います。以前に紹介したセローンが中心メンバーだった時期もあり、ラテン/アフロ風のドラムビートをかなり強調した曲が多いグループです。

1970年代前半にフランスで結成したとされ、ユーロディスコの草分けのような存在です。セローンだけではなく、これも以前に紹介したドン・レイアレック・R・コスタンディノスというディスコ界のビッグネームもメンバーとして名を連ねていました。初期には、プロモーションのために日本も訪れたことがあるそうです。

ディスコミュージックは、1960年代の米国のソウル音楽を最大の出発点としていますが、それにラテン、ロックンロール、ジャズ、ときにはカントリーなんかも要素として貪欲に吸収し、発展していきました。

このコンガスも、ごった煮ディスコを象徴するように、「四つ打ち」のドラムビートを前面に出しつつ、いろんな音楽要素を取り入れています。特に「コンガ」という名前からも察せられるとおり、パーカッションを非常に派手に使っていて、アフリカンでトライバルな魅力に溢れていて「Oh〜ダンサブル!」ってわけです。

知名度は低いわけですが、何しろセローンが加入していたグループなわけですから、ディスコ史を語る上では欠かせない存在でしょう。「フランス発」というのもなかなか意外性があってよいと思います。

彼らの代表的なディスコアルバムは、「Africanism」(77年)と「Anikana-O」(78年)の2枚です。

とりわけ前者は、アルバムとして全米ディスコチャートの3位にまで上昇しています。圧巻は表題曲「Africanism」。もうこれは、しっかりしたドラムワークとトライバルな曲調がめちゃめちゃかっこよく、その上ボーカル(ドン・レイだと思う)も超パワフル!。全身シビれます。ここは久しぶりに「特大おススメ」としておきましょう。

一方の「Anikana-O」もまずまずの出来ですね。最近のクラブシーンでは、こちらの方が人気があるようです。リアルタイムでは、「ジャングル」という収録曲が、日本のディスコでも「ちょっと変わったアフリカン・ジャングルディスコ」として小ヒットしました。でも、曲調が全体的にちょっと地味ですので、「ケバいディスコな感じ」という点では、やはり「Africanism」に軍配が上がると思います。

写真のCDは、その「Africanism」(Amazonnサイトで試聴可)。例の米フロリダ州「ホットプロダクションズ(Hot Productions)」盤ですけど、アルバム収録の4曲に加えて、80年代前半に12インチシングルで発表した「Why Can't We Live Together」と「The Fun City」がオマケで入っています。実はCD-Rなんですが、音質は悪くないので一枚持っていても損はないでしょう。「Anikana-0」については、一部の曲がサルソウル系のコンピCD「Laten Funk Flavas」などに収録されています。
プロフィール

mrkick (Mr. Kick)

「ディスコのことならディスコ堂」----本名・菊地正憲。何かと誤解されるディスコを擁護し、「実は解放と融合の象徴だった」と小さく訴える孤高のディスコ研究家。1965年北海道生まれのバブル世代。本業は雑誌、論壇誌、経済誌などに執筆する元新聞記者のジャーナリスト/ライター/翻訳家。もはや踊る機会はなくなったが、CD&レコードの収集だけは37年前から地味〜に続行中。アドレスは↓
mrkick2000@gmail.com

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*最近多忙のため、曲名質問には基本的にお答えできません。悪しからずご了承ください。
*「ディスコ堂」の記事等の著作権はすべて作者mrkick(菊地正憲)に帰属します。

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